第11章 【水曜日はキミ曜日】
あれは永瀬くんの気まぐれだったのかな…とか
だって住む世界が違うんだもん。
誰も悪くない。それはそれでしょうがないよ、
なんて思いながら迎えた2学期始業式。
その月の席替えで
永瀬くんとはあっさり離れてしまったわけだけど
夏休みが終わって初めての水曜日。
今日はどうするのかな…なんて気になりつつ
自分からはそんな確認できるはずもなくて
いつもより多めに詰め込んだ甘い卵焼きを
気にしながら過ごしたその日の午前中は…
とても、長く感じた。
なのに「髙橋くん、行こー!久々やから
めっちゃ楽しみ!」なんて、
僕の気がかりなんてどこ吹く風の永瀬くん。
*
向かい合って言うんはなんか、照れくさくて
図書館へ向かう途中並んで歩きながら話しかける。
「髙橋くんってさー、可愛い顔しとるよな!」
「…えっ?!何それ、からかってますか…?」
「そんなわけないやん笑 目がさ、
俺が今まで出会ったどの人よりも
ワンちゃんみたいにきゅるんきゅるんやし、
まつ毛とかさ飛んでくんちゃう?
って思うくらい長いやん!」
「まつ毛は…まぁ、長いです。このくらい…」
そんなことを言いながらまつ毛をひっぱりだす
髙橋くんにギョッとする。
「ちょっ!自分、何してるん?!笑
大丈夫?それ…苦笑」
「僕たくさん生えてるから
2〜3本抜けたところでなんで、大丈夫です。」
なんて突飛なことを言いながら抜けたまつ毛を
手のひらにのせて見せる。
「いやいや!笑 そういう問題以上に痛いやん苦笑
おもろいな、髙橋くんって笑笑」
「……よく、言われます。変わってるって。
僕は普通のつもりなんですけど…。」
なんてしょんぼりするから…ほっとけんやん?
「あーなるほどなぁ!髙橋くんはあれやな!
違いが差に見えちゃってるんやなぁ!」
「……それ以外にあるんですか?」
「違いは…裏を返したら強みやない?
少なくとも俺は、こっちが思いもしとらんかった
行動に出る髙橋くんのことおもろいなって思ったし」
「そう…ですか?」
「おん、なんなら好きまであるよ笑」
「……えっ?!」
「あっ着いた!髙橋くん、はよ鍵あけてー!」
落ち着け。落ち着け僕…。
永瀬くんの好きはねこ好きーとか、いぬ好きーとか、
たまご焼き好きーとか、その類いの好きで。
動揺してるなんてバレたら
一生の恥!