第11章 【水曜日はキミ曜日】
なんていうか…見た目はシュッとしてて
クールな人なのかなって思っちゃってたけど
「じゃあ、バーコードは今度お願いします。」
「やった!約束なっ!」なんて目を輝かせていて。
さっきオレのお弁当見てるときといい
すっごく素直で可愛い人なんだな、永瀬くんって。
「じゃぁ…今日のところはこの本を番号見ながら
棚に戻してきてもらってもいいですか?」
「お安い御用やで!」
なんて、張り切って受け取ったものの
「……ごめん、飽きてきたわ。。」
「えっ早くない?!笑」
「自分、これ毎週してるん…?すご…」
「すごくもなんともないです!
慣れです、慣れ。ほら!貸してください笑」
「…おねしゃーす!」
卒業証書のように仰々しく渡され
10分もしないうちに手元に戻ってきた本たち苦笑
永瀬くんに頼んだはずの雑務を終えて
カウンターに戻ると、カウンターに突っ伏して
瞳を閉じてる永瀬くんがいて…。
「……キレイ。。」
初めてだった…。
男相手に見惚れるなんて。
もう少しだけ、眠ってて―――。
そんなことを願いつつ
普段は遠い存在の彼を盗み見る。
描きやすそうなすべりだいみたいに
キレイな鼻だなぁ、とか。
シャープな輪郭もまぁるくて小さな頭も
サラサラの髪の毛も、
マンガから出てきた王子様みたいだなぁ、とか。
薄くも、厚くもなくてかわいい色味が差した
絶妙な唇だなぁ、とか。
女のコよりキレイだけど
ちゃんと、喉仏は控えめに存在してて
やっぱり、男のコなんだなぁ、とか。
そんなバカなことを思ったりして。
「…んっ、…?俺、寝とった?」
「わっわかんない!いまっ!
いま、カウンターに戻ってきたからっ」
そんな小さな嘘をつく自分に
少しだけ、後ろめたさを感じたりして。
それから程なくして、夏休みに入って。
初めて一緒に過ごした水曜日に交換した連絡先に
メッセージが入ることもなく
当然、オレから送るなんてことできるはずもなく
淡々と夏休みが過ぎた。
いざ、長期休みに入ってみると…
僕と彼を繋ぐものなんか何にもなくて。
連絡をする理由も、逢う理由も何ひとつない
そういう現実がただ、そこにあるだけだった。