第6章 蒼炎を慈しむ※荼毘
「……ゆらと会っても壊すなよ?リーダー。」
荼毘がそう言うと、死柄木はチラッと荼毘を見た。
「……面倒くせぇな…。」
死柄木はポツリと呟く。
荼毘は死柄木から目線を外すと、ゆらを思い返した。
何を考えているのか分からなく、持て余す様な女だった。
月明かりの下見るゆらは、とても妖艶で、あんな妖しさを持った美しい女を見た事が無かった。
その反面、性格は子供っぽく、ゆら自身ですら、自分を持て余している感じだった。
自分の個性をよく知っていて、戦闘にも慣れている。
雄英に入って訓練しただけでは、この短期間であの動きが出来るのか疑問だ。
アレが大人の女になったら、どんな風になるのだろうか。
性質はヴィランそのモノなのに、ゆらは全くこちらの世界には興味が無い。
ゆらの衝動の対象がまた、ヴィランの歪んだ特質なのだろう。
近親憎悪なのだろう。
そして、自分と同じ様に反応した相手が、この死柄木だ。
「……………。」
荼毘は死柄木をチラッと見ると、しばらく考えた。
もう会わない様な別れ方をしたゆら。
だけど荼毘は、ゆらのあの衝動が、もう突き走って止まらなくなっている事を知っている。
果たして、ヒーロー側に、彼女を止めるだけの魅力があるのだろうか。
(また、どうせすぐ来るさ…。)
抑えられない衝動に恍悦の笑みで荼毘の目の前に現れる。
荼毘はそう確信して、フッと笑った。