第5章 蒼炎を逐う※轟焦凍
気持ち的には、全然大丈夫だが、物理的には少し困った状況だ。
ゆらの体のあちこちに、轟の精子が飛び散っている。
轟は自分の処理より、ゆらの汚れを取ってくれた。
流石に、彼の拘束は外した。
お互いの事後の処理を終えると、少し気まずい時間が流れた。
「…轟、ありがとう…随分落ち着いた。」
その言葉は嘘じゃなかったので、申し訳なそうにしている轟に、ゆらは伝えた。
轟はゆらの言葉を聞くと、少し表情が明るくなった。
一線を超えてしまった自責の念が、彼にあるらしい。
でもそれは、轟だけの所為では無いので、そんなに落ち込まないで欲しかった。
「…秤、もうちょっと触ってたい…。」
轟が手を伸ばして、ゆらの頬に触ってきた。
ゆらはチラッと時計を見た。
このまま横になっていたら、眠ってしまいそうだ。
こんな昂りの無い、穏やかな眠気は久しぶりだ。
「…ちょっとだけ…。」
自分の部屋に帰らないといけない。
このままの眠気のまま、目を瞑りたい。
轟は、アラームを設定した。
少しだけでもこのままゆらと一緒に眠りたい。
ギュッと轟に抱き締められながら、布団の中に入っているのは、思った以上に心地よかった。
しばらくは、お互いに触れている部分の感触を確かめる様に感じていた。
その内瞼が重たくなって、同じ位に目が閉じた。
アラームが鳴るまで、ゆらは轟の腕の中で、グッスリ眠れたと思う。
その日初めて、荼毘と会ってからずっと見ていた、蒼炎を逐う夢は見なかった。