第5章 蒼炎を逐う※轟焦凍
ゆらは自宅待機を無視して、寮生活が始まるまでは、荼毘を追っていた。
しかし、全国くまなくアンテナを張っても、荼毘を見つける事はできなかった。
ホークスのツテの情報屋を使ったのにだ。
もどかしい気持ちは積み上がり、ただ荼毘に会いたいと言う気持ちが膨れ上がる。
ゆらは湧き上がる衝動を抑えるに、毎日苦悩していた。
知ってしまった衝動を、無かった事に出来ない。
頭がおかしくなりそうだ。
早く荼毘に触れて、この渇きを潤したかった。
その内、寮生活が始まり、ゆらはクラスメイトと一緒に、寮の案内に参加した。
事前に指定した家具は、もう部屋に着いているらしい。
他のクラスメイトの様に、寮生活に関して、浮き立つ気持ちは無いが、1人で悶々とするよりは、有意義な時間が過ごせそうだ。
ゆらは自宅待機が取れて、久しぶりの学校に、少しは助けられた。
それでも渇きは止まらず、悶々としている所に、轟とバッタリ会った。
合宿以来だろうか、久しぶりの同級生に懐かしさすら覚えた。
「……大丈夫だったか?」
轟は、爆豪と一緒に、ヴィランに捕まった事を心配している様だった。
楽しかったなんて、言えるはずもなく、ゆらは曖昧な返事をした。
この会話のせいで、またあの時の情欲を思い出した。
ゆらは轟に構わずに大きなため息を吐いた。
ソレが轟には、ゆらがあの事件のせいで、傷を負ったように見えたらしい。
彼から動揺が伝わった。
「……俺に出来る事はあるか?」
轟は相変わらず優しい。
自分は何も悪くないのに、申し訳無さそうにゆらにそう言った。