第2章 蒼炎を喰む※荼毘
「…意外に簡単に捕まったね、爆豪君。」
ゆらは自身の出した鎖で柱に縛られている爆豪を見ながら言った。
隣には同じ様な体制で、轟も縛られていた。
A組とB組の対抗訓練。
普段、滅多にお目にかかれない2人に、ゆらは目を細める。
「っふざっけんなよ!変態女!」
爆豪はコレでもかと、睨みながらゆらに怒鳴った。
「何でテメェ個性偽ってんだよ!」
ゆらは自分の腰に巻いてある鎖を触りながら、怒鳴ってくる爆豪に笑みを見せた。
ゆらはヒーロー科の皆にも、自分の個性が抹消と言う事を伝えていなかった。
正確には、腰に付けている鎖でヒーロー科目や体育祭を対応していたので、周りが勝手に鎖の個性だと思っているだけだ。
敢えてゆらは自分の個性を言っていなかった。
元々身体能力には自信があったし、それこそ鎖が個性と思われるまで、ずっと使い込んできた武器であるのも変わりない。
「…偽っていると言うより、言って無かっただけだよ。」
個性を公表していたら、警戒されて鎖をただの武器だと思って貰えなくなる。
そしたらつまらないのだ。
こうしてイケメンを縛る事が出来なくなって。
ゆらはとても気持ちの良い光景に、思わず顔が緩む。
「言っちゃったら、こうして縛れなかったから♡」
一回でも良かったから、2人まとめてこうして縛った姿を見たかった。
もう、思い残す事は無い。
「いいからさっさと解け!クソが!」
「授業が終わったら、個性解くよ。」
それまでは、ずっとこの光景を愛でていたい。
「……秤がこんな性格だったとは思わなかった…。」
さっきまで黙っていた轟がポツリと言った。
どんな意味で言っているのだろうか、考えるまでも無く、その表情ですぐに分かった。