第21章 オリジン※荼毘・死柄木
ホテルの部屋に着くと、2人は無言で部屋に入った。
「ゆら……。」
まだ泣き止んでいないゆらを、焦凍は椅子に座らせる。
机にあるティッシュに手を伸ばして、顔を覆っているゆらの手を取って涙を拭いた。
焦凍が涙を拭いていると、ゆらの目が開いて焦凍を見た。
今日初めてこうしてちゃんと目が合った。
泣き腫らしている目に、焦凍はぎゅっと目を顰めたが、ソッとゆらの顔に触れるとゆらにキスをした。
キスをするとゆっくりとゆらの目が閉じたので、その顔を見て焦凍もまた目を閉じた。
時間を少しおけば、頭は働くと思っていた。
だけどどうしても耐え難い事実に、思考は停止したままで、ゆらにかける言葉も見つからないのに、彼女の顔を見たら、どうしてもキスをしたかった。
「…ゆら…。」
唇を離して名前を呼ぶと、薄っすらゆらの目が開いた。
「……俺に話したいの?」
焦凍にそう聞かれると、ゆらの顔が歪んだ。
分かってる。
焦凍には残酷な話だ。
自分の気持ちを焦凍に離して、同じ負担を共有して欲しいと言っている。
浅ましい自分の考えに、また涙が出た。
その涙もまた、焦凍は優しい手つきで拭ってくれる。
「……俺にゆらの負担を背負っていいって言ってくれるなら……。
背負うよ、一緒に。
ゆらの負担も感情も、全部俺にくれ。」
ゆらの全てになりたかった。
彼女の個性も、どうしようも無い性も全部含めて、もう愛していた。
ゆらが一緒に背負って欲しいと言うなら、その相手になりたいと思った。
頼りない細い糸の繋がりでも、ゆらが紡いでくれるなら、離しはしないと違ったんだ。