第19章 蒼炎と一騎当千※轟焦凍・ホークス
焦凍に痛みなど感じるはずは無いから、すぐに入っていった。
それでもゆっくり、ゆっくりと、焦凍はゆらの中に気を使って入ってくる。
「……焦凍……。」
その気遣いが嬉しくて、焦凍の背中を抱き締めながら涙が出そうだ。
「ゆら……、俺雄英入って良かった……ゆらに会えて良かった。」
耳元で焦凍の声が聞こえて、もう涙は止まらなかった。
別れな訳じゃない。
ただ少し遠くで暮らす事になるだけだ。
たったそれだけが、別れの様に辛いのは、2人がまだ子供だからだ。
早く大人になりたい。
早く…プロヒーローになりたい。
先にその道を選んだゆらが羨ましくもあり、嬉しいのに。
焦凍はゆらは抱き締めたまま動けなかった。
「……焦凍、早く動いてよ…。」
ゆらが笑いながら焦凍に言った。
「……動いて…終わっちゃったら、もう会えなくなりそうで…。」
動けなかった。
そう言った焦凍を、目を細めて見つめた。
大丈夫だと思っていても、ゆらも少し…そんな気持ちだったから…。
「…ゆら…、今日はやっぱり出来ねぇ…。」
「うん…。」
焦凍はスッと体をゆらから離した。
「だけど、ずっとキスして抱いてていいか?」
そう言って見下ろす焦凍も涙目だった。
「……足りないけど……。」
ゆらは腕を伸ばして、再び焦凍を引き寄せる。
「次会った時に、沢山してね…。」
そう言って、焦凍の唇にキスをした。
暗い道に明かりを灯してくれる様な人だった。
焦凍に会えたから、荼毘に魅了されながらも、帰る道を間違えなかった。