第11章 蒼炎と鎖※荼毘
『上層部の案件を受けたって。』
「……うん。」
電話の向こうのホークスの機嫌が悪いのはすぐに分かる。
大人しくしていろと言われたのに、言う事を聞かなかったからだ。
これだけヒーローに狙われている。
側に居なければ、あっという間に荼毘は捕まってしまいそうだ。
任務を受けるに当たって、公安の要望も分かった。
八斎會が研究した薬を手に入れたい様だ。
連合はともかく、八斎會に入るのは難しそうだ。
ホークスはきっと相談には乗ってくれないだろう。
「……しばらく連合にいる事もあるから、ホークスからの連絡は出れない。」
スマホの情報も消す事になるだろう。
ゆらがそう言うと、ホークスは終始不機嫌そうだ。
しかし、もう決めた事だから、ホークスが何を言っても変えるつもりは無かった。
ホークスの電話を切ると、ゆらはため息を吐いた。
今日、久しぶりに連合に向かう。
荼毘はともかく、死柄木はどうだろうか。
オールフォーワンを失い、彼の情報網はどれだけなのだろう。
(……歓迎はされないだろうな…。)
いつもの死柄木の様子を思い出して、ゆらは苦笑した。
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荼毘との待ち合わせ場所に向かうと、荼毘は先に来ていた。
ゆらを見て荼毘はフッと笑った。
(可愛い…。)
その笑顔を見て、ゆらは目を細める。
荼毘に出された手を握って、少しだけ胸が痛んだ。
彼を捕まえるだけにこの道を選んだと、そう言ったら。
荼毘の顔は怒りで歪むのか、悲しみで歪むのか。
その時は、その顔を見てゆらをまた同じ顔をするのだろう。