第10章 蒼炎の衝動※荼毘
早くいつもの様に、縛らせて欲しいと懇願してほしい。
荼毘はゆらの肩を掴むと、グッと押してベットに寝かせた。
「…荼毘…困ったね…。」
今日は何をしても荼毘の気が逸れる。
全然集中してくれない荼毘に、ゆらは目を細めた。
誰のせいだと、荼毘の顔がゆらに言っている。
ゆらはフッと笑って、体を起こした。
荼毘の顔に手を添えると、グッと顔を近付けた。
「…荼毘…戻れなくなよ。」
「…いいじゃねぇか。」
荼毘の唇が軽く触れた。
「お前がコッチに来るんだろ?」
個性の衝動も抑える事をしなくていい。
荼毘の側に居るだけの甘美な時間。
「……馬鹿だね荼毘…。」
ゆらは荼毘の手を握ると、拘束具を出した。
「自分から縛られに来るなんて♡」
いつもの恍惚の笑みでゆらは荼毘を見下ろした。
荼毘はそのゆらの顔を見て、やっと笑みを浮かべる。
2人はやっと望みのキスをする。
ゆらは荼毘の舌を絡めながら、薄っすら目を開けて荼毘を見た。
(…本当に馬鹿だな…。)
せっかく逃してあげようと思ったのに。
荼毘が好きだから。
だけど、もう手放せない。
荼毘の最後に鎖をかけるのは、やはり自分だと。
ゆらは心に決めた。