第9章 蒼炎を悔悟する※轟焦凍
「……轟…、私の個性は本当に異端なの…。」
ゆらは顔を手で覆って言った。
たとえ、轟を好きになっても、荼毘の様に衝動を突き動かす人に出会った時に、ゆらは自分の衝動を抑える自信が無い。
誰かを好きという気持ちよりも、個性の衝動の方が遥かに強い。
理性とか、道徳とか。
普通の人が持っている観念なんて、簡単に突き破る。
誰か1人の人を愛するなんて、一生出来ないだろう。
「……ソレがゆらだから。」
轟は顔を隠しているゆらの手を掴む。
「全部俺が受け入れるから。」
真っ直ぐに自分を見てくる轟に、ゆらは目を顰めた。
そう言っても、いつか嫌になって離れるだろう。
沢山傷付ける未来しか無いのに、どうしてこの手は離してくれないのだろう。
「…馬鹿な轟…。」
「…うん。」
その時に、傷付くのは。
轟なのだろうか、自分なのだろうか。
彼の蒼い目を見て、そんな未来が来なければいいと願うのに。
同じ目の荼毘を思い浮かべるのだ。
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次の日に、学校前で轟を見かけた。
昨夜は中々帰ろうとしなかった轟のせいで、2人とも寝不足だ。
轟はゆらを見付けると、すぐに寄ってきた。
嫌な予感がする。
ガバッとゆらを勢いよく抱き締める。
勿論、同級生の前で。
「おはよう、ゆら。」
そう言って、ゆらの頬に何度もキスをする。
周りから悲鳴の様な歓声が聞こえる。
轟が壊れた。
当たり前だが、しばらくはその話題で持ちきりだ。
そうして、周りから埋められていき、仮免を落ちた轟が元気になった事だけが、唯一の救いになった。