第8章 蒼炎乱舞※死柄木
「荼毘も私の事好きだよ。」
ゆらがそう言うと、荼毘は目を細める。
「…分かってる。」
目を伏せた荼毘を見て思った。
これは私の初恋で。
初めての両思いだ。
ゆらは顔を背けた荼毘から目を逸らして、そのまま部屋を出た。
ゆらが部屋を出ると、死柄木がそこに居た。
何か言いたそうに、ゆらを見てる。
「……もっと練習した方がいいよ。」
「…抱きたい女なら、普通に抱くさ。」
笑って皮肉ったゆらに、つまらなそうに死柄木は言った。
「……縛って…。」
そう言った死柄木を、一見見たら、そんな趣味の人間に見える光景だ。
でも、ゆらは知っていた。
死柄木の腕に拘束具を付けてあげる。
死柄木はソレを目を伏せて見て、ゆっくりとゆらの顔に触れる。
五指で。
きっと彼が五指で人に触れるのは、久しぶりの事なのだろう。
何かを確認する様に触れる死柄木に、ゆらは目を瞑った。
部屋から荼毘も出てきて、その2人の光景を見る。
目を細める荼毘の顔を見て、ゆらは実感した。
私達は、ヒーローとヴィランで。
そしてこれが、私の初めての失恋だ。