第21章 東京合宿 主役は遅れて登場?
今回の合宿開催地は東京の音駒高校。
そこに梟谷、森然、生川、烏野の5つが集まる1泊2日の合同合宿。
「よーし・・・フライング1周~」
「「「うぃーっす」」」
澤村先輩の声が響くとみんなが後に続いた。この声今日何度目だろうか?
「なかなか勝てないですね」
「うん・・。やっぱりどの学校も強いね」
おでこまだ痛む?と心配そうに見る清水先輩。
あの時後ろにいた旭先輩がとっさにリュックを掴んでくれたから、おでこはちょっと打った程度だったけど念のためって冷えピタを貼られた。
対戦相手の人たちにジロジロ見られて恥ずかしかったし、音駒と試合の時は最初心配してくれた黒尾さんが理由を聞いた後涙を流して笑ってた。
研磨くんは早く治るといいねってずっと心配して、さっきなんか氷を貰ってきてくれた。
クタクタになって戻ってくるみんなに渡す飲み物を補充する。
「一ノ瀬ちゃん!お疲れ様」
同じくドリンクを作りに来た犬岡くんと水飲み場で何度目かの再会。
今回はレギュラーメンバーではないみたい。
「灰羽くん凄いね!大きいし物凄く手足長い」
「GWの時は来てなかったから初めて見るよね?ロシア人とのハーフなんだよ。身長も190cm以上ある。
高校からバレー始めたのにメキメキ成長して凄いんだ。・・・俺も負けてられない」
灰羽くんと犬岡くんはMB。同じポジションを争うライバルだ。
「翔陽たちは補習受けてから来るんでしょ?間に合いそう?」
「きっと大丈夫!」
日向くんたちが赤点補習を受けてからこの合宿に来る事、ずいぶん色々な人に広まってしまった・・・
「またね~」と挨拶したあと、お互いのベンチに戻っていく。
フライング一周が終わった烏野メンバーが水分補給をして休んでいると、隣のコートから元気な声が響いてきた。
「レフトレフト!」
力強くボールを呼んだあと強烈なスパイクを決めた梟谷の木兎さん。全国5本の指に入るエース。
「凄いね、私たちもほとんどあの人に決められた」
先程の試合結果をまとめたノートを見ながら清水先輩が言う。
二人で梟谷の試合を観察していると、木兎さんがこちらを見て両手を振った。
「誰か呼んでる?」
「誰かいるんでしょうか?」
周りをキョロキョロするとこっちを指さす。私たちに手を振っているようだ。
ペコリとお辞儀をすると嬉しそうにジャンプした。
「「?」」
清水先輩と首をかしげる。