第17章 始動
「研磨?写真見た??」
「見たよ。これ翔陽なの?」
「分かる?おれ!!一ノ瀬が撮ってくれたんだ!カッコイイでしょ~」
「うん、凄くいい写真。みな撮るの上手だね」
日向くんがスピーカーにしてくれたので私にも研磨くんの声が聞こえてきた。
「研磨くん!ありがとう!」
「あっ、みなも近くにいるの?」
「うん!日向くんの隣にいるよ。いま体育館なんだけど、こっちはもうすぐ部活始まるとこ」
「おれはいま部室にいるところ。こっちももうすぐ部活・・・」
「研磨が電話なんて珍しいな。誰と話してるんだ?」
「女の子か?」「なにっ!?女子だと!」「俺たちにも聞かせろよ」
研磨くんの後ろから賑やかな声が聞こえてきた。
黒尾さんや夜久さん、山本さんの声かな?音駒のみんなの顔を思い出して嬉しくなる。
「・・・ごめん。うるさいの来たから切るね。東京で会えるの楽しみにしてるよ」
そう言って電話が切れた。
「東京で会える?」
日向くんが不思議そうな顔をする。
武田先生たちは部員のみんなに東京合宿の話をまだしてない。
なんだろうね?と知らない振りをした。
早く武田先生から話出来るようになるといいな。
練習後、烏養コーチにポスターの話をすると、町内会メンバーのお店に貼ってくれるように頼んでみるよ、と快く了承してくれた。
「それにしてもいいポスターだな。
この写真は前にカメラ持って走り回ってた時の1枚か?」
「そうです!良いの撮れたなって自信作です!」
「このプレーのあと、ボールが飛んできて一ノ瀬危なかったよな?」
口元に手を当てて笑う。
月島くんがブロックしたボールが私のほうに飛んできたのだ。
横にいた清水先輩がボールを止めてくれたから大丈夫だったけど、もしいなかったら・・・きっと顔面に当たっていただろう。
思い出すだけで怖くなる。
「あの時は写真に夢中になりすぎてボール見てませんでした・・・。
清水先輩が止めてくれなかったらと思うとゾッとします」
烏養コーチがその場面を思い出してずっと笑っていた。
ポスターを貼り出してからしばらくすると、少しずつ寄付金についての問い合わせが。
武田先生と烏養コーチが毎日どこかしらから電話が来ると教えてくれた。