第17章 始動
珍しく放課後の体育館に一番乗り。
いつも来るのが早い二人は補習を受けている。
さっき教室の前を通ったら、1列目で影山くんが白目向いて寝てて・・・おかしくて笑っていたらこっちに気づいた日向くんが小さく手を振った。
周りに人がいないのを確認して倉庫からボールを引っ張り出す
「私にもバレー出来るかな?」
みんながやっている姿を思い出して見様見真似でオーバーハンドパス
「あはは、全然出来ない」
ボールはすぐに床に落ちた。
もう一度挑戦したら顔にボールがぶつかる。
アンダーにも挑戦するが腕は痛いし、思った方向に飛ばない。
「みんな簡単そうにやってるように見えるけどやっぱり難しいなぁ」
「珍しいやつが1番乗りだな!」
入口の方から元気な声が聞こえてくる。
「西谷先輩!あっ・・・いつから来てたんですか?」
「倉庫からボール引っ張り出してるところからか?面白そうなことやってるなと思って」
下手なバレー姿を最初から全部見られてたんだ・・。
「腰は低くして、こうやるんだよ」
足元に転がるボールを拾うとポンポンとアンダーを繰り返す。
「凄い・・・」
思わず見とれていると「ほら」とこちらにパスしてきた。
「えっ、あ!」
急いでアンダーで返す。変な方向に飛んで行ってしまったが、西谷先輩はちゃんと拾ってくれた。
「上手だぞ。その調子」
「ほい」ともう一度パスがくる。今度はオーバーで返す。
「いいな!出来てるぞ!」
ニシシ!と笑って受け止めてくれた。
あれ?続いてる?なんかバレー楽しいかもしれない・・・
「みなもバレーやってみろよ。教えてやるから」
そっちのがもっとバレー面白くなるぞ、と言う。
「本当ですか!?ぜひお願いします!」
「任せろ!」
「おぉ~珍しい奴らが1番乗りだな?」
田中先輩たちもやってきた。
部活終わりの片付けが済むとみんなが部室に戻る。一足先に着替えが済んだ私は体育館前で月島くんと山口くんを待つ。
「再来週末に練習試合の話が来てるんですが、学校のバスは他の部活が使うみたいで・・」
「どこか空いてないか俺の方も当たってみるよ。今後の事も考えると色々見つけたほうがいいよな」
体育館の中から武田先生と烏養コーチの声が聞こえてきた。
「まだみんなには言ってないんですが、猫又監督から東京合宿の話も来てるんです」
「マジか!?」
猫又監督・・・!?音駒高校だ!