第15章 道しるべ
嶋田さんに学校まで送ってもらった。
「これから部活あるのか?頑張れよー」
重い足取りで教室に戻り、置いてある荷物を取る。
次に向かうのは職員室。
”ごめん。武田先生はごまかせなかった。
戻ってきたら職員室来るようにって”
友達から届いたメッセージを読んで頭が真っ白になる。
今日の午後の授業は武田先生だったのを忘れていた。
「失礼します・・・」
職員室のドアを開いて武田先生の姿を探す。
「来たね。こっち座ってくれる?」
目の前にイスを出された。武田先生と向かい合う。
「仙台市体育館に行ってたんだって?」
「はい・・・」
「午後も学校あるのは分かってたよね」
膝の上で固く握りしめた手を見ながら小さくうなずく。
先生の顔が怖くて見れない・・・。
「君は学生だ。学生の本文は学業なのも分かってる?」
「もちろんです」
「どうして観に行ったの?」
嶋田さんにも聞かれた質問。
車の中で言ったことをここでも答える。
「昨日の試合で感じた事を自分なりに考えて行動に移したんだね。
それは素晴らしい事だと思う。そしてとても勇気のいることだ。
君は”まだ足りないものだらけ”って言ったね?
全部を一度に習得しようとするのは誰だって難しい。上手くいかなくて焦ってしまうしね。
ゆっくり でも着実に、1歩ずつ進むのはどう?
日向君達もそうやって進んでいるんじゃないのかな。ずっと傍で彼等を見ていた君なら分かると思うんだ」
何度も壁に挑む日向くんの背中が浮かぶ。
「それに、君の周りに居るのは競い合う相手じゃない、共に前へ進む仲間だよ」
皆の顔が浮かんだ。泣きそうな顔で武田先生を見る。
「さっき3年生達が”春高を目指す為に部活に残りたい”って言いに来たよ。後輩達と一緒に戦いたいって。
もうすぐ部活が始まる時間だ。一ノ瀬さんも行っておいで」
いつもの優しい笑顔で先生が言う。
「今日はすみませんでした。私焦っちゃって・・・やるべき事もちゃんとして、1歩ずつ進んでみます」
先生に深々と頭を下げ、職員室を飛び出す。
周りと比べてしまったり、すぐに結果を求めて焦ってしまうけど・・・
何度も何度も繰り返して、立ち止まってもいい、まずは一歩ずつ進むしかない。
「遠きに行くは必ず近きよりす・・・・だな」
小テストを採点しながら、武田先生がつぶやいた。
