第9章 インハイ 予選
武田先生がインハイ予選の組み合わせ表を持ってきた。
烏野はAブロック。1回戦を勝ち上がれば"鉄壁”の一言に尽きる「伊達工業」、そして同じブロックのシードには大王様のいる「青葉城西」が。
全国大会へ進めるのは県内約60チーム中たった1チームのみ。
先日練習試合を行った音駒高校と戦う為にはここを勝ち上がらなければいけない。
予選まであと2週間。毎日のみんなの練習にも気合が入る。
「なんだろう?」
清水先輩と部室で荷物整理していると、奥のほうから出てきたのは”幕”と書かれたほこりまみれの段ボール。
確認の為開けてみると少しボロボロになった横断幕
「こんなのあったんだ。知らなかった・・」
清水先輩も初めて存在を知ったみたい。
飾れたらカッコ良さそうだなぁ。綺麗にして使えるように出来たら頑張る皆に向けて私たちからのエールにならないかな・・・?
清水先輩と目が合った。きっとお互い同じこと思い浮かんだ気がする。
「私たちで綺麗にしてみようか?」
「それでみんなに見せましょう!」
大会までもう時間がない。
クリーニングに出して綺麗になると、今度は修繕。空き時間を見つけては無心で作業を進めていく。
「二人ともおつかれ~大地が肉まんオゴってくれるって言うんだけど」
「ゴメン、私たちやることがあるから。おつかれ」
「お先、お疲れ様です!」
部活後のわずかな時間も貴重な作業時間
「痛っ!」
「みなちゃん大丈夫?」
渡された絆創膏を涙目で受け取る。
慣れない針仕事で毎日指先に絆創膏が増えていく。家庭科は苦手だ・・
そういえば課題のエプロンも上手に作れなかったな。
完成が近づいてくるのが分かると作業ペースも自然と上がっていく
前日にやっと完成。部活後にお披露目することに。
そわそわして何度も時計を見てると
「一ノ瀬どうしたの?」
なんか今日変だ、と心配そうな日向くん。
本当は早く言いたいし、見せたいけど・・・
隣の清水先輩をチラリと見ると「もうちょっとだから」って笑う。
嬉しい事を内緒にするって大変だ
烏養コーチの言葉のあと、締めようとする澤村先輩を武田先生が止め
「清水さん達からちょっと!」と促される。
みんなの視線が私たちに集まる中、武田先生と一緒に2階に上がる。
バサァ!っという音と共に”飛べ”と書かれた烏野の横断幕が広がった