第71章 春高 開幕!
扉の先には眩いくらいのライトがコートを照らしている。
聞こえてくるのはボールの、選手の、観客の音
「(ついに・・・私もここに来たんだ)」
前を歩く日向くん、影山くん、月島くん、山口くんの背中に声をかけた
「わ、私も・・」
絞り出した声は自分でも分かるくらい震えてる。
4人が一斉に振り向く
「私も!やっとみんなに追いついたよ!」
不思議そうな顔で見ていたみんなが笑った
「? 今までも横にいたじゃん!」
「緊張で記憶飛んだか?ボケるのは日向だけで十分だ」
「何言ってるの?ずっと同じ場所いたデショ?」
「一ノ瀬ちゃん!ほら、行こう!」
「行こう、行こう!」
日向くんと山口くんに手をひかれる。
5人並んで1歩を踏み出した。
ため息が出そうなくらい高い天井、沢山のライトにぼんやりと見えるお客さんの顔。熱気と興奮が満ちた会場。
「(ここが先輩たちが、日向くんが憧れた小さな巨人の立った
舞台・・・『東京体育館』なんだ)」
緊張で体が硬くなっていく。
「(潔子先輩に託してもらったんだ!絶対繋げる!)」
そんな時ポンと肩を叩かれた
「一ノ瀬、安心しろ。俺たちも緊張えぐいぞ?」
「テレビでは見てたけどやっぱ実際に立つとヤバイな・・・」
「ここ酸素薄くないか・・?」
旭先輩の顔色は心配になるくらい良くない
私も同じくらい緊張してる・・・
はなちゃんと谷地ちゃんに貰ったお守りをギュッと握りしめた。
「(一人じゃない。大丈夫、大丈夫・・・)」
それとは対照的な人たちもいる
「すげー人の数だな!」
「ライトもすごいです!オレンジ・コート!」
西谷先輩と日向くんがキラキラした瞳で会場を見渡した。
「えっ?お、おいっ!ベンチに入るの一ノ瀬ちゃんじゃないか!?」
「えっ!?・・・本当だ」
嶋田と明光が驚いた顔でコートを見下ろす。
「ついにあいつらと同じコートに立つ日が来たんだな。ずっと頑張ってたもんな・・・しかもデビュー戦が春高1日目なんて凄いぞ!
くそっ、おじさんの涙腺脆いんだからこういうサプライズはやめろよ・・」
「俺もひたむきに頑張る背中見てきたんで・・・嬉しいです」
「お前らどこ目線で春高見てんだよ?」
滝ノ上が呆れたように二人を見る
「「一ノ瀬ちゃん!!頑張れよーーー!」」