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約束の景色

第70章 西の風


じっとこちらを見つめるまっすぐな瞳にドキドキする。
「ち、違います!いまはみんなの荷物番してて。
これは・・・その・・・食べ損ねた朝ご飯です」
「朝ご飯はちゃんと食べなあかんで」
「さっき泣きそうにしてたんは?どないしたん?」
治さんが不思議そうにこっちを見た。
「あれは・・・おにぎり食べてたらおばあちゃんの漬物が食べたいな~って思いまして。寂しくなってました・・・」
自分で言ってて恥ずかしくなった。
初めて会った人たちの前で私はなにを言ってるんだろう?
段々と小さい声になっていって最後の方はきっと聞き取れなかっただろう。

「そうなんかぁ!うまい漬けもん作ってくれるばあちゃんなんやなぁー!ええなぁー!」
嬉しそうに言う治さんと対照的に、目の前の北さんが驚いた顔をした。
「(おかしな子だってひいちゃったかな??)」
「おばあちゃん子なん?」
「は、はいっ!!おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に暮らしています!」
「そうか、うちと一緒やな」
フワっと表情を和らげた北さんが優しく微笑む
「(北さんが女の子に笑いかけとる!!!しかもこんな優しい笑顔見るん初めてや!)」
「おばあちゃん子なんですか?」
「せやで」
「一緒ですね!」

「俺たちは兵庫県代表の稲荷崎高校です」
「あっ、宮城県代表、烏野高校です!1年マネージャーの一ノ瀬みなと言います」
「北信介です。こっちは宮治。試合で当たったらよろしくお願いします」

「(ん?)」
北さんがお辞儀をすると、ふと視界に入った何かが揺れる。
バッグに白くてフワフワした、可愛らしいぬいぐるみが付いていた。
印象的な大きな目。
こんな事言ったら失礼かもだけど・・・なんだか北さんに似ている?
「可愛いですね!」
「これな、北さんのばあちゃんが”北さんに似てるから”ってプレゼントしたやつなんよ!」
治さんが嬉しそうに教えてくれる。
「私もなんだか似てるって思いました!」
「やっぱそう思うよな!」
治さんと二人で盛り上がるのを、北さんが静かに見守っている。不思議な光景

「そろそろ行くで」
会話がひと段落したのを見計らって、北さんが治さんの腕を引いた。
「ほな、また」
二人が軽く手を振って歩いて行く。
「稲荷崎高校の北さんと宮さんか。怖い人じゃなくて良かった・・・。また会えるといいな」

しばらくして烏野のみんなが戻ってきた
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