第65章 発見
坂ノ下商店では、烏養が春高遠征の寄付金を再度募る旨を連絡していた。
そこへ配達途中の嶋田がやってくる。
「チース!これうちの分な?」
「助かるよ。いまOBとかにも連絡してんだけど4件に1回は見合いの話が出るから長くてよ・・・」
あるあるだな、と嶋田が笑った。
「こないだ店に武田先生と一ノ瀬ちゃんが来たよ。募金箱設置のお礼ってチラシ渡された!」
烏養に1枚の紙を渡す。
「春高決まった報告と主将からお礼のメッセージが書いてあってさ、なんかジーンッときちゃったよ。あいつらが頑張ってる姿見続けてきて、ついに春高!!!だからさ。
ポスター貼ってくれた店とか、募金に協力してくれた人達に配って回ってるらしい」
チラシに目を通せば、バレー部の選手たちが優勝トロフィーを手にした写真と主将の澤村からのメッセージが添えられている。
派手ではないが、気持ちがこもったチラシだ。
「そういえばこないだ写真撮ってたな。何に使うんだ?って聞いたら嬉しそうにニヤニヤ笑って教えてくれなかったんだけど・・・そっか。これ作ってたのか」
壁には再度寄付を募る新しいポスターが貼られていた。
「自分達だって仕事に学業に忙しいだろうに・・・烏野排球部の為に頑張ってるよな。だから俺ももういっちょ頑張ってくるわ!」
空になった募金箱を手に店を出て行った。
日向からの連絡はあれ以降ない。
俺と武田先生と澤村の三人からみっちり怒られた。
「・・・向こうには鷲匠監督がいる」
あいつにとっては物凄く辛い環境になってることは想像できた。
「球拾いとしてなら居てもいいって言われたらしいけど・・・鷲匠先生のことだ。本当にそれしかやらせてもらえてないんだろうな・・・」
”居ても居なくてもいい存在”
・・・それでもこっちに帰ってくることはなかった。
日向もむこうでの合宿に必死でくらいついてるんだろう。
「合宿メンバーの刺激受けてこっちもかなり気合入って練習してるからな。あいつらが戻ってきたときにビックリするんじゃないか?」
それならば俺も頑張らなければ。
「よーし、電話かけ引き続き頑張るか・・・」
あいつらの苦労に比べたら見合いの話聞くのなんて軽いもんだ。
気合を入れて受話器を上げた。