第64章 雨上がり
日向side
昨日は帰り道に我慢できなくてハンバーガー食べたという話をしたら”今日の帰り少し時間ある?”と聞かれた。
今から行く、って連絡して急いで待ち合わせ場所へ向かう。
「(あれ?もう来てる?)」
いつから待っててくれてたんだろう?街頭に照らされた一ノ瀬は、ここからでも分かるくらいほっぺたが赤い
昨日の電話、声しか聞いてないから分からないけど
なんだか泣いてる気がして・・・
アドバイスはしてあげられない。だからご飯を差し入れする!温かいもの食べると元気になるから
「(もうすぐ来るかな~?あっ!)」
バッグから温かいお茶と少し潰れたおにぎりを渡してくれた
「作ってくれたの!?ありがとう!!・・・もしかしてかなり急いで来たんじゃ?ごめんね」
「え?あぁ・・そんなことないよ?」
えへへ、と照れたように笑ってる。
今日の練習の様子とかを食べながら一ノ瀬に報告した
ボール拾いからでも学べるところは沢山ある!・・はず。
悔しさとか口に出してない。それなのに、そんな小さな不安に気づいたように優しく笑った
「”影山の居ないお前に俺は価値を感じない”、白鳥沢の監督にそう言われたんだ・・・」
「え?」
「あっ!?」
言うつもりはなかった。でも気づいたら口からこぼれだしてた
「それはずっと気づいてた・・・。おれが一番よく分かってる」
夏にぶつかったときも言ってた
影山くんのトスに合わせてるだけじゃ上手くならない。自分1人でも戦えるようになりたい!って
「分かってる・・・」
スゥーって深く息を吸い込む。伝われ!
「”今は”だよ!」
突然大きな声を出したから日向くんがびっくりして顔をあげた。
「”今は”影山くんに頼ること多いかもしれない。でも日向くんはずっと成長してる!」
出会ったあの日から、ずっと二人のバレーしてる姿見てきた。
日向くんの成長速度は本当にすごいと思う!
どんな壁にぶつかっても歩みを止めず走り続ける背中に、私も何度勇気もらってきたか分からない。
「私が初めて二人のバレー見た時とは比べ物にならないくらい、日向くん変わった。だから1週間後、一か月後なんてもっとすごいと思う。
成長速度No.1だよ?
だからこの先は日向くん自身が流れを変えるプレーする!絶対大丈夫!」
真っすぐ日向くんを見る。
「だって日向くんは”烏野のエース”になる人だから!」
