第61章 黒い雲 ①
「よし!じゃあ今日はこれで終わり。お疲れ・・・」
烏養コーチが締めようとすると、入口の扉がすごい勢いで開いた。
武田先生が駆け込んでくる。
「い、いま連絡があって・・・・影山君!
君に全日本ユース強化合宿の召集がかかりました」
「「「!!!!」」」
驚いたみんなが一斉に影山くんを見る。
ユースは19歳以下の日本代表・・・白鳥沢学園の牛島さんも選ばれてたやつ!
影山くんがそこに選ばれるなんて!
「それともう一つお知らせが・・・
宮城県の有望な選手だけを集めた合宿を行うと連絡がありました。
こちらは1年生だけですが、いうなれば”疑似ユース合宿”ですね。
烏野(うち)からも一人お声がかかっています」
次のユース候補!?それが烏野から・・・
「月島君!」
「ツッキーすげー!!!」
合宿という単語を聞いて本人はすごくイヤそうな顔をしてる。
うちの学校から二人も代表選手が出るなんて。
一人は県代表!そしてもう一人は日本代表!すごい・・・。
「先生っ!!おれは?」
「えーっと・・・今回声がかかったのは二人だけです」
「・・今回は呼ばれなかっただけだよ!次は!」
部活後、みんなで坂ノ下商店へ寄り道。
さっきからずっと黙ったままの日向くんの背中に声をかけた。
「・・・」
「日向くん・・・」
探していたものを見つけた日向くんが手を伸ばす。
「(??・・・歯ブラシセット?)」
キョトンとした顔で見ればニヤリと笑う。
周りにいるみんなには聞こえないように小さな声で言った。
「おれも白鳥沢行ってくる!”混ぜてください”って!」
「えっ!?呼ばれたのは月島くんだけじゃ・・・」
「うん!でも行ってくる!強い奴が試合以外でどんななのか、どうして強いのか・・知りたい」
多分もう”行く”って選択肢以外は頭になさそう。
「(すごいな・・・だって混ぜてもらえるかも分からないし、追い出されるかもしれないし、ものすごく怒られるかもしれないのに)」
自分の気持ちにここまで真っすぐで、しかもそれを行動に移せるなんて尊敬してしまう。
「分かった!気を付けて行ってきてね」
「オウ!」
この好奇心が日向くんを成長させてるんだ・・・
頑張ってきてね!