第60章 夏のお返し
"東京遠征で疲れてるだろうから、月曜の部活は来ないでいい”
烏養コーチからそう言われているので、放課後は荷物を持って駅へ
「(よし!)」
綺麗にラッピングしたプレゼントを持って青葉城西へ向かった。
校門まで来てみたけど・・・
他校の生徒が勝手に入って大丈夫だろうか?ウロウロと中をのぞき込む。
「(前に影山くんは潜入出来たって言ってたし、多分平気だと思うけど・・・)」
まだ部活に顔出してるって言ってた。今日もいるかな?
体育館では岩泉と及川が後輩たちに混ざってバレーをしていた。
「岩泉ー!」
入口から男子生徒が名前を呼ぶ。
「オウ!」
「お前に会いに来た子連れてきた!」
もったいぶったように一度そこで言葉を切ったあと、ニヤリと笑った。
「他校の!しかも”女の子”!!」
体育館に響くくらいわざと大きな声で告げる。
「ハァァッ!!?」
岩泉から変な声が出た。周りにいた後輩たちもざわつく。
「岩泉さんに女の子?誰だ?」
「岩ちゃん!いつの間に・・・・」
「うるせぇ!身に覚えがない。間違いだろ!」
及川を適当にあしらった後入口に立つ男子生徒に食って掛かろうとすると・・・
恥ずかしそうに一ノ瀬がひょっこり顔を出す。
「えっ・・・一ノ瀬?なんでここに??」
会う約束をしていただろうか?もしそうだったら忘れるはずがない。
「案内していただいてすみません。ありがとうございました!」
「気にしないで」
男子生徒にお礼を言った後、岩泉のほうに歩いてくる。
「どうした??急に」
「前に勉強教えてもらったお礼するって約束したので。届けに来ました!」
「前・・・夏に言ってたやつ?」
「それです!」
夏に偶然会って、一緒にご飯食べたときに勉強教えてあげた。
それのお礼?律儀過ぎないか??
「別にお礼なんか良かったのに・・・わざわざ来てくれたのか?悪かったな」
「ちゃんと約束守らせてください」
ニッ!っと笑うと綺麗にラッピングされた小さな包みを取り出した。
「味見したんで大丈夫です!見た目は・・・先に謝ります。すみません」
渡された袋を開けると手作りのクッキーが。
「これ俺に?」
「はい!」
”ブタ・・・か?可愛いな”
”犬です・・・”
そんな二人のやり取りをボーっと見ていた集団の中から及川が飛び出した