第55章 決勝戦 vs白鳥沢⑤【歓喜】
帰りのバスに揺られてみんなの寝息が聞こえてくる。
初めての5セットマッチ、それをフルセットで戦ったんだ。
疲労もすごいと思う。
今はお腹もいっぱいだし。ゆっくり休んで回復してほしい。
「片付けは俺達でやるから、お前らは早く家帰れ!寝ながら歩くなよ?家までしっかり帰れよー!」
「「「うーすっ」」」
寝起きの声でみんながあいさつした後、各自ヨロヨロと家に向かって歩きだした。
「烏養コーチ!私にも片付けやらせてください!」
「一ノ瀬も疲れてるだろ?今日はいいよ」
「バスで沢山寝たし、私はいけます!」
あまりの勢いに烏養コーチがOKを出してくれた。
「そうか?助かるよ。ありがと」
武田先生と部室に荷物を運ぶ
「ついにうちが春高に!」
嬉しそうに拳をギュッと握った。
「先生が練習試合の相手を見つけてくれたり、東京合宿に行けるようにしてくれたり・・・色々やってくれたおかげです!本当にありがとうございました」
今日は美味しいご飯までごちそうになってしまった。
「いえいえ!みんなの頑張りに比べたらこれくらい」
さっき泣いて赤くなった鼻をさすりながらニコニコと笑う。
「烏養くんも言ってましたが、マネージャーの二人の力本当に凄かった。みんなの支えになってましたよ」
みんなが居なくなって気が緩んだのか、武田先生の穏やかな声にホッとしたのか、気付いたら涙がこぼれていた。
「一ノ瀬さんは”みんなに追いつきたい!”ってずっとずっと頑張ってましたよね。
その姿は僕にも刺激になりました。負けてられないって」
学校サボって試合観に行ったのが懐かしいですね?と言われて焦ってしまった。
その姿を見て先生がフフフと笑う。
からかわれてしまったみたいだ。
「”遠きに行くは必ず近きよりす”
何かを成すには一歩一歩順を追って進まねばならない」
武田先生が優しい眼差しを向ける。
「なかなか進まず焦ってしまうこともあるけど、一歩一歩進むのが目標達成には必要なことだよ。
でも一ノ瀬さんは大丈夫。みんなと同じように前に進んでるよ。今はそのままやってみなさい」
「あり・・がとうございます!」
武田先生の言葉はいつも優しい
「そうだ!今度寄付してくれた方たちに”春高決まりました!”ってお知らせを何か配布しようと思うんだ!また写真をお願いしてもいいかな?」
「もちろんです!」
