第55章 決勝戦 vs白鳥沢⑤【歓喜】
「はちちゃん、お疲れ様。それにおめでとう!」
「おめでとう」
「大王様!岩泉さん!」
1階に移動しようとしたとき上の方から声をかけられた。来てくれてたんだ!
急いで駆け寄ると、転ぶなよ?って心配された
「観に来てくれてたんですね・・・ありがとうございます!」
「はちちゃん・・・俺、もう負けたし”大王様”じゃないよ」
ふてくされたように言うと隣の岩泉が笑った。
キョトンとした顔で一ノ瀬が及川を見つめる
「でも・・・私の中で及川さんは強くて優しくてカッコいい人なので。やっぱり”大王様”です!!」
キラキラした瞳でそう言った一ノ瀬を、今度は及川がキョトンとした顔で見る
「一ノ瀬ちゃん!烏養達のとこ早く行ったほうがいいぞー」
後ろから嶋田の声が響く。
「早く行って来いよ」
「はい!」
岩泉に急かされ、階段を駆け下りて行った。
「あんな風に言われちゃ”名前呼んでほしい”とは伝えられないな?
一ノ瀬のこと、お前もちゃんと名前で呼びたいのにタイミング逃してずっと呼べない記録・・・また更新だ」
「俺のカッコ悪いとこなんて沢山見てるはずなのに。あれはズルイよ・・・」
子供みたいに口をとがらせて拗ねる及川
「お前めんどくさいやつだな」
「マネージャーってさ、選手が試合で100%の力を出せるようにサポートしてくれる存在って今まで思ったけど、はちちゃん見てたらその考えがちょっと変わったよ」
「ん?」
「実際コートに立つわけじゃないけど、あの子たちも選手の一人なんだって。俺たちと同じようにあの瞬間を戦ってた。
目の前に居るわけじゃないのにものすごく圧を感じる、手強い相手だった」
「確かに、あの声ヤバかったな。何度潰しても烏野のやつらが立ち上がってくるのが分かった」
”まだだ!まだ終わってない!”
全員がそういう目をしてた。何度も心が折れそうになっていたのに。
「知ってる?はちちゃんバレーの練習もしてるんだって。才能開花させて本当に選手になって・・・コート立つ日が来るかもね?」
「それは絶対ない・・・って言い切れないのが怖いな」
二人が笑った。
チビちゃんもはちちゃんも、飛雄のありのままを受け入れてる。
だからこそ飛雄も二人に対しての信頼が強い。本人は気づいてないだろうけど・・・
最高の相棒が二人も揃ってるんだ・・・今のあいつは強いよ
