
第44章 代表決定戦! 伊達工業vs青葉城西 【鼓舞】

※おまけ 秘密特訓体育館
「いまちょっと大丈夫?」
「どうしたんですか?」
「話があるんだ・・・」
少し難しい顔をした月島くんのお兄さん、明光さんに手招きされる。
あれから同じ体育館で練習することが何度かあり、顔を合わせる機会も増えた。
こっちに気付くと挨拶してくれて、「部活どう?困ってることない?」って色々気にかけてくれる。
廊下のつきあたり、自販機で死角になっているベンチに連れていかれる。
「(な、なんだろう・・・)」
ここに歩いてくるまで無言だった。
いつもあんなに明るい、優しい雰囲気をまとっている明光さんがこんなに真剣な表情をするなんて。
物凄く大事な話なのかもしれない。
横長のベンチに二人で腰を下ろす。
フゥーと深い呼吸をしたあとにバッグから何かを取り出した。
出てきたのは大きなうちわ。
鮮やかな色のペンで「蛍がんばれ」と大きく書かれている。
「これ持って、今度応援行こうと考えてるんだけど・・・」
率直な意見を聞かせてほしい、真剣な眼差しでそう言われた。
両手で丁寧に受け取り表裏しっかり確認する。
とても上手だ。
こんなもの作れるなんて明光さんは手先が器用な人なんだな。
胸元に掲げてみる。文字も大きいし、キラキラ輝いてて、コートにいる月島くんにも絶対よく見える。
「どう思う?」
「すごい目立つし、きっと月島くんに想いが届くと思います!」
明光さんの顔がパァ!っと輝く。
「でも・・・・」
率直な意見を聞かせてほしいと言われたからには、思ったことは正直に伝えたほうがいいよね。
「月島くんがこれ見たら・・・もう話しかけてくれない気がします」
田中先輩や西谷先輩たちだったら感動してくれそうだけど、月島くんはこういうの喜ぶタイプに見えない。
「やっぱり・・?”他人のフリしますね”とか言われそうだよね?」
うちわを見た月島くんを想像してみた。うん、きっと言うと思う。
うなずくとため息をついてうちわをバッグに戻した。
「”もう会場に来ないで”って言われるのが1番イヤだから、今回は諦めるよ。一ノ瀬ちゃんに確認して良かった・・・」
「でもすごい素敵なうちわです!いつか出番あるかもしれません」
「そうかな?じゃあ大切に保管しておく。実はね、他のパターンも作ったんだ!見たい?」
「ぜひ!」
明光さんの写真フォルダは月島くん応援グッズの写真でいっぱいだった
