第39章 最終合宿 1日目 託す者・託される者
9月末、東京に最後の合同合宿へ向かう。
半袖でいると夕方ぐらいから肌寒いと感じるようになってきた。
季節はもうすぐ秋。代表決定戦も近づいてきてる。
眠い目をこすりながらバスを降りて行けば、音駒のみなさんが出迎えに来てくれてる。
「研磨!おはよー!」
「翔陽、いらっしゃい」
「ほらっ、月島!山口!シャキっと歩けー!」
「龍ー!」
「虎ー!」
この光景もなんか見慣れてきた。
音駒高校が第二の母校って感じがしてホッとする。
「今回は練習試合を多めにやるって事で、うちに烏野のマネージャーさんが入ってくれる!」
黒尾の説明で音駒のベンチがざわつく。
「烏野3年の清水です。よろしくお願いします」
「「「お願いしあス!」」」
「今回は潔子さんがうちのマネージャー?
このパターンは聞いてない。練習してない・・・」
山本の顔が青ざめる。
「いつもマネージャーをお願いしてしまってすみません」
「いえ、お気になさらず。何かあれば言ってください」
テキパキと動く清水に感心する黒尾。
「(みなちゃんが憧れる理由も分かる気がする)」
じっと見られている事に気付いた清水が不思議そうに黒尾を見た。
「何か?」
「いや、烏野のマネージャーさんはいつも頼もしいなと。
GW、夏合宿の時は一ノ瀬さんに本当に助けてもらいました」
一ノ瀬の名前が出ると清水が表情を和らげる
「それは嬉しい言葉です。ありがとうございます」
烏野のベンチにいる一ノ瀬に視線を移した。
「これから先の事を考えて、彼女にも少しずつ烏野のベンチに慣れてほしいんです」
今の3年にとって次が最後の公式戦だ。
後輩たちに残せるものは1つでも多いほうがいい。
「最初、彼女がこちら側に入ると言ったんですが・・・今回は私に行かせてほしいとお願いしました。
みなちゃんがいつも見ている景色を私も見てみたくなったんです」
一ノ瀬が”音駒のベンチに入る”と当たり前のように言ってくれたことを嬉しく思うのと同時に、目の前の彼女も一ノ瀬の事を大切にしているのだなと伝わってきて黒尾のほほも緩んだ。
「(みなちゃんは色々な人に大事にされてるんだな)」
「ノヤっさん!潔子さんと音駒の主将が楽しそうに話してる!」
「あまり長引くと危険そうだな!」
田中と西谷が警戒レベルをMAXにした