第35章 勉強のお礼
夏休みも折り返し地点を過ぎたが、まだまだ体育館の中は暑い。
みんなは今日もひたすら汗を流して練習する。
2回目の合宿を終えてから、それぞれの技にもさらに磨きがかかってきた。
春高予選はもう目の前だ!
「一ノ瀬!ちょっといい?」
ビブスを配っていた時、日向くんに声を掛けられた。
「今日って部活終わり時間ある?」
「うん」
「じゃあさ、一緒に帰ろうよ」
着替えが終わり体育館の入口に行くと日向くんと影山くんが待っていた。
「お待たせ!どうしたの?」
家の方向が逆の二人と一緒に帰ることはほとんどない。
「東京遠征の時、勉強たくさん教えてもらったからさ。
追試1発で合格できたのも一ノ瀬のおかげだし、おれたちなんかお礼しなきゃって話してたんだ!」
「飯おごる!何か食いたいもんあったら言ってくれ」
食べたいもの・・・
沢山動いたし、甘いもの食べたいな~って思うけど、多分この二人は練習終わりでものすごくお腹減ってるところだよね。
できれば早く家に帰ってちゃんとしたごはんを食べてほしい・・。
「坂ノ下商店いこう!あそこで欲しいものあるの」
商品棚の中から最近狙っていたお菓子を手に取った。
「これっ!新発売で食べたいなと思ってたやつ!」
「これでいいのか?もっとこう、飯!って感じの、腹いっぱいになるやつとかじゃなくて??」
「そうだよ!こういうのじゃなくて。遠慮とかしないでいいからさ」
欲しいと言ったお菓子は二人によって棚に戻される。
遠慮してるとずっとこのやり取りを繰り返しそうだ。どうしたらいいかなぁ・・・あっ!
「分かった!じゃあ行きたい場所あるの。でも今日じゃなくて明日なんだけど」
「「どこ?」」
「△△町のお祭り!部活終わりにそこ行きたい!」
「そんなのでいいのか?」
「おれが楽しみになっちゃう・・・」
「いい?」
二人ともコクンとうなずいた。
そして迎えた翌日。
楽しみすぎて部活中からソワソワ落ち着かない。
「どうしたの?何か楽しそうだね」
潔子先輩が笑っている。
「えへへ。部活終わりにお楽しみが待ってるんです!」
一ノ瀬が楽しそうなのと同じで日向と影山も部活終わるのが待ち遠しかった。