第29章 合宿2回目 変化①
午後は音駒に移動してマネージャーの仕事。
烏野との試合中、猫又監督が月島くんを見て声を漏らす。
「ふむ・・・・変化を拒む者、か?」
「?」
月島くんになにかあるのかな?
「どうした?」
考え事しているところを黒尾さんに声かけられる。
「猫又監督が月島くんの事不思議そうに見るんです・・・」
「メガネくんか。もったいないよな・・・」
「??」
「すごいポテンシャル持ってるのに、それを伸ばすの自分で拒んでる感じなんだよな~」
たまに手を抜くことはあるけど、練習も試合の時も真面目にやってるように見える。それだけじゃダメなのかな?
不思議そうな顔をしているのに気づいて黒尾さんが口を開いた。
「メガネくんはさ、平均以上は取るけど100点は目指さない。
チビちゃんと同じポジションだけど持ってるものは正反対。
あの身長と冷静な感じとか、賢さ、周りに対しての観察力。恵まれてるじゃんか」
本当もったいないよなぁ~とつぶやく。
休憩時間に森然の父兄の方々からスイカの差し入れがあった。
みんなに配り終わった後、日陰に入って私も休憩する。
”しっかり休憩、水分補給”
研磨くんと大地先輩に気を付けるように言われてるから今日は特に意識しよう。
前半の試合の結果をまとめてあとで猫又監督に渡そうとノートを開く。
「休憩時間はしっかり休みなよ」
月島くんがやって来て隣に腰を下ろした。
「今日は水分ちゃんと摂ってるの?澤村さんに言われてるんデショ?」
手のひらを指さす。大地先輩が書いた文字はまだ消えずに残ってる。
「はい」
言われてノートを閉じた。
そうだよな、これしちゃ休憩にならないか
「月島くんはもっとスイカ食べないの?」
「1個で十分」
遠くで日向くんたちがスイカの種飛ばして遊んでた。
だれが一番遠くに飛ばせるか競い合ってるみたいだ。
夏休み!って感じのする微笑ましい光景。
「・・・・そんなにガムシャラに頑張らなくてもいいんじゃない?」
「え?」
「たかが部活じゃん。そこまで一生懸命やったってこの先に生かせるわけじゃないし。
それに・・・どんなに頑張っても必ず報われるわけじゃない・・・」
最後のほうは小さい声だったからよく聞こえなかった。
いまなんて言ったの?って聞こうとしたときに練習再開の声が響く。
「もう始まるって。行こう」
先に歩き出した月島くんの背中はなんだか寂しそうだった。