第27章 自主練
出来上がった宿題を大切にカバンにしまう。思った以上に進んでかなり余裕ができた。
「お二人のおかげで夏休みの余裕出来ました。ありがとうございます」
「それなら良かったよ。分からないところあったらいつでも教えるから言えよ?」
「今度何かお礼させてください!」
そんなの気にしなくていいから、って首を横に振られた。
「うんうん!これくらい気にしないでよ」
でも・・・と食い下がる。
”いいこと思いついた!”って顔で大王様がこっちを見た。
「じゃあ連絡先教えてくれる?分からないとこいつでも質問出来るよ」
それだと私ばっかり得してお礼になってない気がするけど・・・。
とにかく二人と連絡先を交換した。大王様はなんだか嬉しそうだ。
お店を出ると改札まで見送ってくれた。
「もうぶつからないように気をつけろよ?」
「またご飯食べ行こうね~」
見えなくなるまでずっと手を振ってくれる。
次会うのはきっと春高予選の体育館。
大王様たちに負けないように私も頑張ろう!
「さっき聞いた質問。あれ、飛雄たちのことだよ」
「そうかな?とは思ったんだけど、やっぱりか」
「はちちゃんの口から飛雄の名前聞きたくないから言わなかったけど・・・・この間、偶然あいつに会ったんだ」
「へー」
「チビちゃんが変わろうとしてるのに、飛雄は現状がベストだと思い込んで守りに入っちゃってて。今のままだと”独裁の王様”に逆戻りだね。相変わらずのポンコツで喜んじゃったよ」
言葉とは裏腹に及川が悔しそうな表情をした。
「顔が全然喜んでないけど?」
「・・・はちちゃんがしんどそうな顔するのは見たくない」
「それにしても、まさかここで会えるなんて思わなかったよ!
連絡先も交換できたし今日はツイてるな」
大事そうにスマホを握りしめる。
「女の連絡先なんて山ほど入ってるだろ?」
「はちちゃんは別!」
「ふーん」
「岩ちゃんもちゃっかり連絡先交換してるし。たくさん連絡してはちちゃん困らせないでよ?」
「あ”ぁ??どの口が言ってやがる!それはこっちのセリフだボゲェッ!」
その夜、岩泉さんと大王様の両方から、ほぼ同じ時間帯にメッセージが届いた。
小さい頃から一緒だと、こういうところも合ってくるのかも。
阿吽の呼吸ってやつかな?