第24章 前進
車に一ノ瀬を乗せてじいさんの元へ向かう。
昨日から日向と影山が個別に練習を始めていた。
速攻を更にパワーアップさせる為、どちらも今自分に出来ることを頑張っている。
日向の方はじいさんが、影山の方は俺が付き添って。
東京合宿から戻ってきた日、体育館で二人がぶつかった場に一ノ瀬も居たと聞いた。
二人の事気になってるだろうし。
もしかしたら今日来たのは俺に何か聞きにかもしれないしな。
「日向はじいさんの所で、影山は俺が付き添って、変人速攻をパワーアップさせる為に昨日から練習始めたんだ」
「そうだったんですね!」
影山くんが言ってたのはそういうことか、と小さく呟く。
「二人とも答え見つけたんですね」
嬉しそうにそう言った。
「差し入れ持ってきたぞ!あと、今日はもう一人連れてきた」
速攻の練習をしていた日向とチビッ子達が一斉にこちらを振り返った。
「えぇっ!!一ノ瀬!?」
「ショーちゃん、あの人だれ~?」
好奇心いっぱいの目で一ノ瀬を見る。
「差し入れ持ってきたよ!」
「繋心、あの子は?」
「うちの1年生マネージャー。これから時々手伝いに来させる」
大丈夫だとは分かっているが、日向達の繋がりを作っておく為にも間に一ノ瀬を入れたほうがいい気がした。
大変になってしまって申し訳ないが、これからはどちらの練習にもちょいちょい顔を出すようにしてもらう。
二人の一ノ瀬に対する信頼度も高いし。
メンタル維持の為にもあいつらの傍にいてもらいたい。
「絶賛バレー勉強中だから、経験値上げる為にも練習見させてやってほしいんだ」
「・・・まぁ、いいだろう」
俺の言ってない心情も見透かしたように、フンと笑う。
このじじいは本当に侮れない・・・。
日向達が練習を再開した。
「あれは”ファーストテンポ”って攻撃で、ショーちゃんはいま”誰とでもファーストテンポ”の練習をしてるんだ!」
「”ファーストテンポ”?」
「うんとね・・・」
一ノ瀬がチビッ子達に囲まれてバレーを教えてもらっている。先生が沢山いるから良い勉強の場になりそうだ。
今日は顔見せ程度で切り上げて、ちょいちょいここに来てもらう事にしよう。
うちの店にある自転車貸してやるか!
一ノ瀬、いつも大変な役割任せてすまんな。こんど好きなもの奢ってやるからな!