第22章 東京合宿 ”安定” と ”進化”
前を歩いていた影山くんが立ち止まった。
「なんでだ?俺のほうが正しいはずなのに・・・なんであいつは食い下がる?」
「影山くんは・・・日向くんや私よりバレーのこと知ってるから、きっと正しいことを言ってるんだと思う」
そうだろ?って顔でこっちを見る。
まだ続きある。汗ばむ手をギュッと握りしめた。勇気出せ私!
「でも、正しいことが必ず正解だとは限らないんじゃないかな?
もし・・・影山くんの正確なトスから日向くんが最後まで自分で考えて打てたら・・・すごい速攻になるんじゃないのかな!?」
「確かにそれは凄いけど、出来る保証ない」
さっきやったの見てただろ?と言われる。
「ギュン!の速攻だって、今までないのに出来たやつなんでしょ?だったら・・・」
「あいつにその技術まだない」
ぐぐぐっ・・・まだ!弱気になるな!
「あの頃の日向くんなら無理かもだけど、今の日向くんは物凄い勢いで成長してるよ!やってみる価値あるんじゃないのかな?
それに・・・あんなに”今変わらなきゃ!”って思ってるんだもん。
きっと必要な変化なんだよ」
「あいつの勝手なプレーがチームのバランスを崩すんだ!
"勝ち"に必要な奴になら誰にだってトスを上げる。でも今のあいつにそうは感じない」
「でも・・・あの速攻は日向くんの1番の武器だから、それを磨くのが・・」
「春高の一次予選は来月だ。すぐそこだ!
成功するかも分からないことに時間割くよりも、もっとやることあるだろ!」
影山くんの強い口調に体が固まる。そんな私にハッ!って気付いた。
「・・・怖がらせて悪かった」
「ううん。影山くん悪くない」
誰も悪くなんてない。分かってる。
二人してむぅーって顔になる。
みんな向いてる方向は一緒なのに
”もっと強くなりたい!”って気持ちは一緒なのに
答えは出ない