【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第15章 一陽来復を願う(外伝・伏黒恵視点)
「五条さん、恵くんと二人にさせてもらえますか?」
「…うん、分かった」
さんに言われて五条さんは部屋を出て行く。
その去り際に俺は頭をわしゃわしゃと撫でられた。
五条さんもさんも俺の様子に気づいているのだろう。
「恵くん、話してもらえるかな?」
俯いて動かない俺にさんは優しく声をかけてくれた。
「…俺が勝手に戻ってきたせいで、さんが怪我を負って…すみませんでした」
「それは違うよ。恵くん、私を助けてくれたじゃない」
「でも、結局は庇ってもらいました」
「恵くん、私ね…正直もう諦めてたの。この呪霊には敵わない。ここで死ぬんだって。私は呪術師なんだからそれも仕方ないって。そうやって諦めてたところに…恵くんが戻ってきてくれた」
「でも、俺は…」
「恵くん、あのね…私にも、弟がいるの」
「…え?」
予想外な話が出てきて俺は思わず顔を上げた。
目が合ったさんは眉尻を下げながらも微笑んでいた。
「恵くんにお姉さんがいるように、私にも一つ下の弟がいてね。私を庇ってくれる恵くんに幼い頃の弟の面影が重なって…もう一度あの子に会うためには、今ここで死ねないって思うことができたの」
その話を聞いて、俺はあの時のことを思い出した。
『…やめてっ、 …!』
さんが呼んだのは弟さんの名前だったのか。
「恵くんが私を庇ってくれて、弟のことを思い出させてくれたから、私は生きることを諦めずに呪霊に立ち向かうことができた。だから、勇気を出して戻ってきてくれてありがとう」
「…はい」
さんの言葉を俺はやっと受け入れることができた。
俺を守るため、なんて言われていたら俺の罪悪感は増すばかりだっただろう。
そう言われなかったことに俺は救われた。
弟さんのことは本当の話なのだろうが、落ち込む俺の気を少しでも紛らわせるために話してくれたようにさえ思える。