【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第15章 一陽来復を願う(外伝・伏黒恵視点)
“二級術師が定期巡回中に失踪。補助監督による調査の結果、巡回地にて準一級相当の呪霊が発生したものと断定。本件は準一級以上の術師が引き継ぐものとし、呪霊討伐を命ずる。”
移動中の車内でさんと任務内容を確認しながら向かった現場は普段人が踏み入りそうにない山奥だった。
地元では有名な自殺の名所となっているため、高専が定期巡回をしている場所のひとつだという。
車道が行き止まりになったところで停車して、車から降りる。
既に呪いの気配が漂ってきていて何とも嫌な感じだ。
ここから先は車で進められないので、この場に補助監督を待機させて、さんと俺は徒歩で奥へ進むことになる。
「さぁ、行こう」
下ろした帳の中へ早速入るところで、さんに手を差し伸べられた。
「…俺、手繋いでもらうようなガキじゃないです」
ごく自然と手を差し伸べたさんに悪気は全くなかったのだろうが、子供扱いされたことが気に食わなくて俺は思わず俯いた。
「…ごめんなさい。私が見誤ったね」
まさか謝られるとは思わなくて、俺は驚きのあまり再び顔を上げた。
さんは申し訳なさそうに眉尻を下げながら俺を見ていた。
「つい…」
さんは確かにそう続けたのだが、その口をふと止めた。
一瞬、思考が何かに囚われたような。
そんな素振りをした後、さんはすぐに何事もなかったかのように俺を見て「ごめんね、行こうか」と微笑んだ。