【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第15章 一陽来復を願う(外伝・伏黒恵視点)
「恵、こちらが僕の後輩のさんだよ」
「初めまして。です」
いつもは冗談めかしてふざけた言動をする五条さんが、珍しく落ち着いたまともな振る舞いで紹介してきた女性…さんはわざわざしゃがんで俺の目線に合わせてから、子供の俺を相手に礼儀正しく挨拶をしてくれた。
「…伏黒恵、です」
「恵くんだね。よろしくお願いします」
今まで自分の周囲にさんのような年上の女性はいなく、真正面から向けられた綺麗な微笑みに俺は思わず見惚れてしまった。
「今回の補助監督さんとは初めてお会いするので、ちょっと挨拶に行ってきますね」
さんが立ち上がって、少し離れたところで車を準備して待機している補助監督の女性のもとへ向かう。
すると今度は五条さんが腰を屈めて、俺の耳元で「に惚れるなよ」と言ってきた。
いつもの調子で揶揄ってきたな…
さんに見惚れてしまった自覚があった俺は指摘された気恥ずかしさに堪えかねて、振り返って睨みつけたのだが。
五条さんは真顔で俺を見ていて、サングラスから少し覗いた眼光の鋭さに、俺は蛇に睨まれた蛙のごとく固まってしまった。
「五条さん、そろそろ行こうと思いますけど大丈夫ですか?」
「うん。恵のことよろしくね」
さんの呼びかけに五条さんはすぐさま笑顔で反応する。
そんな五条さんに俺は背中をグイグイ押されながらさんのもとへ連れて行かれた。
…この人、さっきから何なんだ?
いつもと明らかに調子が違う五条さんに俺はずっと違和感を感じていたのだが。
「、気をつけて行ってきてね」
さんを見つめる五条さんの柔らかい眼差しとその優しい声色に、子供の俺でも察しがついた。
この人…さんのことが好きなんだな。