【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第12章 ある夏の日の情景(外伝・夏油傑視点)
だが、私は違う。
が呪霊に脅かされることがなくなるのであればそれに越したことはないが、この先たとえ何も変わらなくても、私がずっとを守っていけばいい。
私のこの手で大切な姉を守れるのなら本望だ。
だから、が私に謝る必要なんてない。
「、大丈夫だよ」
もう一度にそう言い聞かせて、私の心からの思いを伝える。
「私のこの力はを守るためにあるんだ。だから、安心して私に守られていて」
私の思いが通じたのか、は私を見て穏やかに微笑んでくれた。
そのまま気を失うように瞼が閉じられたが、安心して眠りに落ちただけのようだ。
穏やかな表情で眠るに私も安心して、思わず口元が緩む。
を起こさないようにそっと抱き上げて、祭りの後の静けさの中、私達は家路についた。
翌朝、目を覚ましたは母から昨晩のことを聞いたらしく、落ち込んだ様子で私に謝罪してきた。
「寝ちゃった私を傑が抱えて帰ってきてくれたんだよね?面倒かけてごめんね」
呪霊の件は母に話さなかったが、どうやら自身、呪霊に攫われた以降のことを覚えていないらしい。
怖い思いをした記憶なんて、わざわざ思い出させる必要もないだろう。
「気にしなくていいよ。はしゃいでたから、疲れたんだろう」
「子どもみたいで、恥ずかしい…」
「そんなことないさ。私も久々に楽しめたよ。も楽しかっただろう?」
「…うん。傑と一緒にお祭り行けて、すごく楽しかった」
がいつもの笑顔で私に笑いかける。
それだけで私の心は満ち足りた。
「ありがとう、傑」
私が守る平穏の中で、ずっとそうして笑っていてほしかった。
この力を持つ意味を見出ださせてくれる、私が守るべき大切な姉だった。
二年後、この愛おしい姉を自らの意思で殺すことになろうとは、この時の私は夢にも思っていなかった。
“ある夏の日の情景”END.