【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第2章 ②
体力が回復した私は呪術高専の学生寮に入寮した。
つい最近までここで弟が暮らしていたのだと思いを馳せながら寮内を見回っていると、ある部屋の前で立ち止まった。
廊下沿いに部屋がたくさん立ち並んでる中で他となんら変わり映えしない部屋なのだが、なんとなく惹きつけられる。
何がそんなに私を惹きつけるのか、確かめたくなって目の前にあるドアノブに手をかけようとした。
その時、隣からドアの開く音が聞こえた。
私は思わず腕を引っ込めて隣を見ると、開いたドアから男性が出てきていた。
長身で白髪。
目元が見えないくらい真っ黒なレンズのサングラスをかけている。
彼は私がいることに気づいて、眉を顰めて怪訝そうな顔でこちらを見た。
「…誰?」
真っ黒なサングラス越しに見下ろされる。
その威圧感にたじろぎそうになったが、不審者に思われてそうなこの状況に危機感を覚えてすぐ意識を切り替えた。
「驚かせてしまってすみません。今日から呪術高専に転入する者です」
「転入生?」
「はい。この寮にも入ったばかりで、歩いてるうちに方向が分からなくなってしまって…」
「迷子になったの?ウケる」
「この歳で迷子だなんてお恥ずかしいです…」
部屋の前で立ち止まっていた理由を何とか誤魔化せたようだ。
雰囲気が和らいだことに一安心して私は話を続けた。
「今から校舎に行きたいんですが、玄関が何処か教えていただけませんか?」
「いいよ。つか、校舎まで一緒に行く?」
「いいんですか?」
「もう少しのんびりしてから行こうと思ってたけど、後輩のフォローをするのも先輩の役目だからね」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきます」
「じゃあ行こっか。…と、その前に」
彼は歩き出そうと方向転換したが、ふと動きを止めて「自己紹介がまだだった」と言いながらこちらに振り返った。
その瞬間、彼がかけているサングラスが僅かにずり下がって初めて目が合う。
彼の目は吸い込まれそうなくらいに澄んでいる綺麗な青い瞳だった。
「僕は五条悟。よろしく」
“悟”
彼が教えてくれたその名前を私は知っていた。
傑がよく話を聞かせてくれた、傑の親友の名前だ。
そっか…この子があの“悟”くんなんだ。