【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第10章 ⑩
あの時、憂太たちのもとへ行くと言ってを傑の傍に残したあと、少し離れたところで振り返って見てみれば、僕の前では感情を押し殺していたが傑の手に縋りつきながら泣いていた。
その光景に、以前聞いた二人の言葉が僕の脳裏を過った。
『恨んでなんかいません。むしろ恨めしかったのは…傑がそんなにまで追い詰められていたのも知らずに、傑が守ってくれていた平穏の中でのうのうと生きていた自分自身でした』
『呪いを祓い続けることは傑への懺悔でもあるんです』
『は優しい人だ。私の姉ということもあってこの世界ではさぞ生きづらいだろう。それでもが術師を続けるのなら、私の代わりに君が守ってやってくれないか』
術師となって呪いを祓い続けることで弟を思い続けてきたと、自分がいなくなるこの世界でこの先も生きていく姉を僕に託してでも守りたいと望んだ傑。
本当に二人は互いを大切に思い合う姉弟だったのだ。
それを目の当たりにした僕は、どうしようもない妄想をしてしまった。
もしもがもっと早くに呪力を得ていて、術師として僕達とあの青春を過ごし、ずっと傑の傍にいてくれていたのなら。
きっとは傑の苦しみに気づいて寄り添い、傑が堕ちていかないように守ろうとしただろう。
傑も愛する姉が自分を思う気持ちになら応えようとしたかもしれない。
そしたら傑は堕ちることなく、今も僕達と共に…
僕がそう思ってしまったことを、今後に話すことはないだろう。
自分に力がなかったせいで弟を守れなかったと悔やむにとって、それはきっと呪いの言葉になってしまうから。
そうして終わった百鬼夜行の日の夜、傑が言っていたことをすべてに話した。
は一度溢れ出してしまった感情を押し殺すことができなかったのか、ついに僕の前で涙を流した。
傑の前では我慢していた僕は、やっとを抱きしめることができた。
も僕の胸で泣きながら、僕を労わるように抱きしめ返してくれて、そのまま僕たちは今まで話さなかった傑との思い出を語らい合いながら一夜を共にした。
そして奇しくも聖夜と呼ばれる夜に、僕たちはお互いに抱いている特別な感情を確かめ合うことができたのだ。