【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第9章 ⑨
息をするのを忘れてしまうくらい無感情に没頭していると、不意に両肩を力強く掴まれて意識が引き戻された。
見上げると悟くんの綺麗な顔がすぐ目の前に来ていて、私の額に彼の額が優しく合わせられた。
視線が絡み合って、曇りひとつない青空のように澄んでいる彼の青い瞳に惹き込まれる。
「こんな時まで自分の気持ちを押し殺して、人の心配なんかしなくていい」
悟くんの口から低く優しい声で紡がれる言葉が静かに響いて、両肩を包み込んでいる彼の大きな手のひらのあたたかな温もりを感じた。
「…僕は憂太たちのところへ行かなきゃならない。高専の連中が戻ってくるまで、が傑の傍にいてやって」
そう言って悟くんは私から一度離れるも、すぐに横から支えるように私の肩を抱いてくれた。
「傑のところまで一緒に行こう…歩ける?」
悟くんの優しさに私は声が出ずに頷くことだけしかできなかったけれど、彼はそれさえも見逃さずにゆっくりと一緒に歩いてくれた。
私が傑と向き合えるのは、これが本当に最後になる。
だから悟くんは私に手を差し伸べてくれたのだろう。
悟くんに肩を抱かれながら曲がり角の先へ踏み込み、傑の目の前で立ち止まった。
暗がりの中でも傑の表情がはっきり見えて、胸が痛いほどに締め付けられた。
傑は穏やかに微笑みながら眠っていた。
きっと悟くんのおかげで良い最期を迎えることができたのだろう。
「が生きてること傑に話したよ」
その言葉に私は驚いて隣を振り返ると、悟くんは優しく微笑みながら私を見てくれていた。
「傑はのこと非術師だからって憎んでなんかいなかったよ」
傑がどんな思いで私を手にかけたのか、知る術がなかった私は傑に憎まれていたのではないかとずっと思っていた。
「全部はまたあとで話すけど、これだけは先に伝えとく」
でも、そんなことなかったのだと悟くんは教えてくれた。
「傑は昔も今もずっとを愛してたよ」