【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第9章 ⑨
影を落とす暗がりの中、壁にもたれて座り込むほどの深傷を負いながらも安らかに眠っている。
私の記憶にある十年前の面影が残っていて、そこにいるのが傑だとすぐに分かった。
そして、もう二度と目を覚ます事はないことも直感で理解した。
こうなることは分かっていたはずだ。
頭では理解できているのに、息が詰まって、立っている感覚さえも分からなくなる。
「」
呼びかけられて初めて五条さんが私の傍まで来てくれていたことに気づいた。
「五条さん、どうしてここに…」
「傑が百鬼夜行に乗じて高専に襲撃してきた。狙いは憂太の特級過呪怨霊を奪うことだったんだ」
「乙骨くんが…彼は無事なんですか?」
「大丈夫だよ。憂太が返り討ちにして勝ったんだ。新宿と京都の方も傑の指示によって呪詛師らが逃亡して終わった。だから僕もここへ戻ってきて…深傷を負って逃亡しようとしていた傑にとどめを刺したよ」
五条さんは目を伏せながら、事の顛末をそう教えてくれた。
彼は…悟くんは、傑の親友としての使命を果たしてくれたのだ。
傑の姉として私が託した思いと共に。
これですべてが終わったのだ。
「悟くん、ごめんなさい。あなたにつらい思いをさせて…」
今一番つらいのは親友を自らの手にかけた悟くんだ。
どんな慰めの言葉も彼を救うことはできないけれど、口に出さずにはいられなかった。
それに今ここで私が傑の死に動揺してしまったら、彼が罪悪感を抱きかねない。
私は感情を抑えるように自分に言い聞かせた。
狙われた乙骨くんは無事だった。
新宿・京都の百鬼夜行も高専側の勝利で終わった。
これまで多くの人を殺めた傑は受けるべき罰を受けた。
もう堕ちていくしかない傑を他でもない親友の悟くんが止めてくれた。
私もそれを望んでいた。
これでよかったんだ。