【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第9章 ⑨
東北での追加任務は呪霊の発生条件が予想どおりに的中して、予定よりも早く呪霊を祓うことができた。
急いで東北新幹線に飛び乗った私は日没前に東京へ戻ってこられた。
今頃、五条さんたちは百鬼夜行に備えて新宿で待機しているだろう。
京都とで二分の一の確率だけれど、新宿の方に傑が現れるかもしれない。
任務完了を報告すれば手持ち無沙汰となる私にも参戦命令が下る可能性があるはずだ。
高専へ戻る道すがら、私はずっとそのことばかりを考えていた。
「これは一体…」
高専へ戻ってきた私はその惨状に言葉を失った。
建物は倒壊し、巨大なクレーターのような穴が地面を抉っていた。
すでに事は終わっているらしく辺りは静まり返っているけれど、二つの強い残穢が今も感じられた。
ひとつは以前にも感じたことがあり、おそらく乙骨くんの残穢だと思われる。
では、もうひとつは…敵の残穢なのだろうか。
乙骨くんの安否が心配だ。
もしかしたら敵もまだ近くにいるかもしれない。
探索のために呪力感知に集中すると、先程の二つの残穢とは別の人物の呪力に気付いた。
これは五条さんの呪力だ。
新宿にいるはずの五条さんがなぜ高専にいるのか。
その理由はひとつしか思い当たらない。
私は居ても立っても居られず五条さんの呪力を感じる方へと足早に向かった。
ここへ来た敵はきっと傑なのだろう。
何か目的があって高専を襲撃してきたのだとしたら。
もう、傑は…
五条さんを見つけた。
白い目隠しは外していて、その青い瞳で一点を見つめている。
その表情は憂いを帯びてるように見えた。
五条さんが見つめる曲がり角の先は、私がいる位置からではまだ見えない。
足取りが重くなるのを感じながらも、一歩一歩近づいていく。
その途中で五条さんが私に気づいて、こちらへ振り向いた。
その目は驚きに見開かれていた。
任務が終わったら高専に戻ると五条さんには伝えてあったけれど、この時間に私が来るとは思っていなかったのだろう。
五条さんに声をかけようと歩みを進めると、先程彼が見つめていた曲がり角の先が私の視界にも入った。
その瞬間、私はそちらに意識がすべて奪われて立ち止まってしまった。