【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第8章 ⑧
「…は呪霊に取り憑かれやすい体質の非術師だった。幼い頃からずっと私が呪霊を祓って守り続けてきた。私が守るべき大切な姉だった」
「それならどうしてまで手にかけた?両親と同じくオマエの言う大義のためか?」
「いや…を手にかけたのは、私の我儘だ。非術師を猿にしか見えなくなっても、ずっと大切に守ってきた姉だけは見下したくなかった。見下してしまう前にこの手で殺して、私の愛おしい姉のままで終わってほしかったんだ」
つまり傑は姉を愛するがあまりに殺したというのか。
愛ほど歪んだ呪いはない。
堕ちたからこそ歪んだのか、元より歪んでいたのか…どちらにしろ傑はを愛していたのだ。
そして、も自分を手にかけたこの弟のことを今でも大切に思い続けている。
「しかし、殺したはずの姉が生きていたうえ術師になっていたとは…まるで私の思いを汲み取ってくれたようじゃないか。さすがは私の姉だよ」
「は呪いを祓い続けて術師も非術師も守りたいと言ってたよ。かつてのオマエが追い求めた理想を叶えたいそうだ」
「…そうか」
「生きてると知った今、オマエはもう一度に会いたいか?」
「…私の我儘で手にかけたんだ。今更会わせる顔なんてないさ」
そう自嘲しながら俯いた傑の、前髪から覗くその表情は泣きそうになるのを堪えているように見えた。
会いたくないなんて思ってるようなやつの顔ではない。
「悟」
「…なんだ?」
「は優しい人だ。私の姉ということもあってこの世界ではさぞ生きづらいだろう。それでもが術師を続けるのなら、私の代わりに君が守ってやってくれないか」
そう言って僕にを託す傑の横顔が、弱者生存を説いていたあの頃の面影と重なって見えて、やるせない気持ちが込み上げてきた。
それでも親友の最期の頼みに、僕はただ一言「分かった」と静かに受け入れた。
本当はお互い会いたかったくせに、姉弟二人して真面目すぎたんだ。
オマエらがこんなにも大切に思い合っていたのなら、僕だって二人を会わせてやりたかったよ。
でも、もうタイムリミットだ。
「他に…何か言い残すことはあるか」