【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第8章 ⑧
予定時刻の日没よりも前に開始された百鬼夜行は、高専を襲撃した傑を憂太が返り討ちにしたことにより終わりを迎えた。
「小学校もオマエの仕業だったのか」
「まぁね」
「呆れた奴だ…」
壁に持たれて力なく座り込んでいる傑はかなりの深傷を負っている。
もうあまり時間は残されていないだろう。
死後呪いに転じないよう、傑の命が尽きる前に呪力を込めてとどめを刺さなければならない。
『悟くん、私から傑の姉としてのお願いです。傑をあなたの手で止めてほしい』
初めて僕の名前を呼んで託してくれたの言葉を思い返した。
親友を手にかける僕のことを思ってそう言ってくれたのだろうが、傑のことを今でもあんなに思っているのだから、本当は傑に会いたかったはずだ。
電話の最後には任務をなるべく早く終わらせたら上に指示を仰ぐために高専へ戻ると言っていたが、東北からここまででは時間的にかなり厳しいだろう。
がここへ戻ってくるのを待つことはできない。
「傑、オマエの姉のことだが」
「…君に姉の話をしたことがあったかな」
姉の話を切り出してみると傑はあまり気が進まないのか話を逸らす素振りをした。
自分の手で葬った姉に未練も何もないのかもしれない。
それでも今のことを伝えなければ、彼女の傑への思いは一生浮かばれなくなるだろう。
「は生きてる」
反応に期待が持てないまま事実を告げたのだか、僕の予想に反して傑はすぐに僕を見上げた。
「何を言ってるんだ?」
声を震わせて驚愕する傑は明らかに動揺していた。
「はあの時、私がこの手で…」
「確かにオマエに手をかけられたが、死に際に呪力が増幅したことによって一命を取り留めたんだ。高専の庇護下に置かれたは高専で呪術を学んで術師になった。今日も任務で呪霊を祓いに行ってるよ」
僕の話を聞いた傑は呆然としながら空を仰ぎ見た。
「が術師に…そんなことがあるものなのか」
茜色が夕闇に染まりつつあるこの空の下で今も生きている姉に思いを馳せているように見えた。