【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第5章 ⑤
「実の弟といえど、その弟に殺されかけたんです。いまさらが夏油と接触を図り加担することなどありはしないでしょう」
実の弟?
殺されかけた?
学長は今、と…傑のことを言ったのか?
と傑、僕がそれぞれと共にいた期間は全く被っておらず、この二人に繋がりがあるなんて考えたことすらなかった。
「何なんです?今の話は」
しばらくして電話を終えた学長に語気を強くして詰め寄る。
学長は動じることなく僕を静かに見据えた。
「…悟、先に言っておくが、がお前にも誰にも言わなかったのは上層部からの指示であって本人の意向ではない。そしてここからは俺の独断だが、お前には真実を話しておく」
僕がよく知っているはずだった二人の、僕の知らない関係性。
それを知る学長は僕にその真実を語った。
「傑が集落の人間を皆殺しにしたあとで自分の両親にも手をかけたことは当時お前にも話したが、じつは両親と共に傑の姉もその場に居合わせていた。その姉も非術師であったがためか、両親と同じように傑に手をかけられていた。その姉というのがだ」
「死に際に呪力が増幅したことにより一命を取り留めたは術師になるのが条件で高専の庇護下に置かれることになったが、呪詛師夏油の姉では立場が悪い。母親の旧姓であるを名乗らせて、夏油の姉であることは伏せられた」
「此度の百鬼夜行でが弟側に寝返るのではないかという疑念が上層部で浮上していてる。一級術師として身を粉にして呪術界に貢献してくれているに対して心外極まりない話だが…の立場を守るためにも何も知らせず関わらせないという判断しか俺にはできなかった」
「を保護した際に事情聴取をしたが、傑とは非常に仲の良い姉弟だったそうだ。手にかけられたというのに恨み言ひとつ出てこなかった。夏油傑が呪詛師であり処刑対象であることをも充分に理解しているはずだが、いざその時がきたらさすがに取り乱すやもしれん。そうなれば上層部にまた要らぬ疑念を持たれ、立場が危ぶまれることになるだろう。俺としては、のような優秀な術師をそんなことで潰させたくはない」