第7章 シーン4
ちょっと待ってて、と電話で言いながら美和はなかなかやってこなくて、こちらから電話をかけようかとした時に美和はやってきた。遅いよ、と私が言うと、美和は本当は5分ぐらい前に来ていて私が美和の事を待っている様子を見ようと隠れていたらしい。とりあえず軽く美和の頭を叩いた。
「いや、裕香が私の事待ってるのっていいなあと思って」
「意味わかんない。寒いんだから待たせるな」
「遠くから写真も撮ったんだよ、ほら」
私は美和のスマートフォンを強引に奪ってその画像を消してからもう一度美和の頭を叩いた。
「…いったいなぁ、写真撮ったくらいで」
「盗撮されれば誰だって怒る。しかも待たせやがって」
「ごめんって、コンビニであったかいもの奢るから。あんまんと肉まんとピザまん、どれがいい?」
「おでん」
「えー? ん、まあいいけど」
「大根とはんぺんとそれとココア」
「お金、そんなにもってないんですけど。…おでんにココア? 食べ合わせ悪くない? それ」
「とりあえず何でもいいから食べたい。つか寒い。マジ寒い」
なんだかんだで私と美和は友達だった。普通に友達がする事はやっていたと思う。学校で宿題を見せたり、休み時間に話したり、カラオケに行ったり、買い物したり。普通過ぎて何も書くことが無い。コンビニでは美和におでんとココアを奢ってもらった。美和が大根をはんぶんこしてというので半分分けてあげた。あーん、と美和が口を開けるので雪を放りこんだ。ひっどーいと美和は言いながら笑った。