第3章 シーン1(3)
ここにいてもどうしようもないので帰ろうとした時、コートの中でスマートフォンが鳴った。ポケットに入れていたスマートフォンを取り出す。美和からだった。
「もしもし?」
「あ、裕香? 今どこにいる?」
「学校前の公園だけど」
「ちょっと待ってて、私も一緒に帰る」
「ん、わかった、待ってるね」
予定が出来てしまった、と私は思った。ここにあと数分居なくてはならない。私と美和は友達だ。小学校の時から一緒だった。だからと言って子供の頃を思い返すほどでもない。美和は昔から私についてきた。何をするのにも一緒が良いと言い出し、中学や高校の部活も一緒になった。
私は正直、美和の事が少し鬱陶しかった。美和がいつも側にいるせいで友人関係が限定されるからだ。私が美和の他に友人を作ろうとすると、いつも美和が干渉してきて、ダメになった。他の人から見れば私たちは仲が良く、親友という事になるのだろう。まあ、来年、卒業したら私と美和は離れ離れになるだろう。卒業も悪くないなと少しだけ思った。美和はまだやってこない。