第1章 シーン1
scene 1
開いていたスマートフォンの液晶に雪がひとつ落ち、液晶の画面を伝って地面に落ちるのを見て、私はスマートフォンを見るのをやめ、コートのポケットの中に仕舞った。何かメールやラインを打っていたのではなく、見ていたのでもなく、ましてやゲームをやったりインターネットを見ていたのではない。何もする事が無かったからスマートフォンを開いて、待ち受け画面と今の時刻、残りの電池を確認しただけだった。
今は午後の4時34分。これから遊ぶ予定なんてなく、早く家に帰りたいわけでもなく、コンビニやどこかに寄りたいという事もなく、ただ、学校近くの公園、屋根がある場所で、音も無く降り続ける東北の雪を見続けていた。見続けるしかなかった。何も見るものが無いからだ。