第1章 召喚
『ではシロをください。それとお金もいいでしょうか?』
「シロを?」
老人は驚いた顔をしたが万遍の笑みに変わった。
「どうぞどうぞ。彼は立派な召喚士です。きっとお役に立つでしょう。シロ、コチラへ」
「…はい」
老人の元へ向かったシロはフードを脱いだ。すると老人の顔が歪む。
「貴方は今から奴隷です。主の命令を命より大事にするのですよ」
「はい」
『ちょっと待ってください!』
慌てて前に出ると老人は不思議そうに振り返る。その目には異常者を見るようだ。
「契約の途中ですので、声をかけないで頂けますか?」
『契約?私は日常生活の助けでシロに色々聞きたいだけです』
「召喚士は本来、職場を離れては行けません。プロの資格を持った者のみ自由に動けるのです。あまつさえシロは見習いなので奴隷にしなければ外には出られませんよ」
この世界のルールなど何も分からない。だから少し聞こうと思っただけなのに…奴隷って、ホントにそれでいいの?シロに目を向けると驚いて目を見開いていてから少し笑った。
「私は構いません」
「ほら、シロはいい子でしょ?きっと貴方様の役に立ちますよ」
そう言って奴隷としての契約を言葉にする老人。気持ち悪い。奴隷をすんなり受け入れるのも、神の加護がない人間は躊躇なく殺す思考も。老人達を見ていると頭が痛くなる。
その後はスルスルとことが進む。老人に手を差し出すと手首に黒い輪っかが現れて奴隷の主の証だという。シロが老人と話して後のことは全て手配してくれたようでそのまま教会を出ることが出来た。
そこは大きな街だった。色んな人とすれ違う。動物の頭だったり、鎧を着てたり、水着のような奇抜な格好をしている女性だったり。まるでファンタジーの中へ飛び込んだようだ。
しかし路地裏の影では痩せこけた大人やボロボロの子供たち。皆見ないふりをして通り過ぎていた。この世界は気持ち悪い。
「今日は宿に泊まりましょう」
頷くとフォークとナイフの看板の店に入った。そこでシロが受付をして三日間の宿泊を取ってくれた。その間に何をしたいかゆっくり考えるらしい。
「教会から沢山お金を預かっております。田舎で家を持つ分には一生困らない生活が出来るでしょう」
『そう…なら静かな所で暮らしたいかな』
「かしこまりました」
ドアの前で待機していたシロが部屋を出ていった。