第1章 寝言の秘密
用事があってドズル社に寄ったある日、いつも開けっ放しの談話室に「使用中」の札が掛かっていたことに気が付いた。
スタッフを頑張らせ過ぎて仮眠でも取らせてるのか、なんて俺が冗談でドズルさんに言ったつもりが、実は……なんて真剣そのもので返してきたから驚いた。
「……え、おんりーちゃんが寝てる?」
なんでも、おんりーちゃんは最近鬼畜企画が続き過ぎてよく眠れなくなり、ここまで相談に来たらしい。それで色々と探してみた結果、談話室にある電球色が落ち着けそうとのことで借りに来ているとのこと。最近はおんりーちゃんの抱き枕だらけになっているその談話室は、ほとんどを個室のように貸しているのだそうだ。
「けど、本当に眠れてるのかは僕もよく分からないんですよね」
とドズルさんが顔をしかめて言う。彼がそうやって疑ったことが、外れた試しがない。むしろ当たるから俺も少し不安になる。
「やめてよ……今まで俺たちが無理させてたみたいになるじゃない」
と俺が言えば、そうだと何か閃いたようにドズルさんがこちらを見た。
「おんりーがちゃんと眠れてるか、見に行ってくれません?」
「なんで俺なのよ」
「だって、僕よりぼんさんの方が懐いてるじゃないですか」
懐いてるって何よ、懐いてるって。おんりーちゃんはペットじゃないのよ。
「まぁいいけど」
用事はもう終わったし、これから暇になるところだったので、様子を見るくらいならと俺は軽く引き受けて談話室へ向かった。