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I'll always be with you【アイナナ千】

第16章 永遠に




いつも千さんの家のマンションのエレベーターに乗る時はどきどきする。
今日のどきどきはいつにも増して速くて大きい。


千さんは何かを準備していたのだろうか。
千さんが考えることは、想像がつかない。

怖さ半分、楽しみ半分だ。






「来たね。こっち」

千さんは、嬉しそうに笑顔で出迎えてくれた。
そしてリビングに入った途端、私の手を引き、作業部屋に入っていった。

『ちょっ、ええっ、』


私は、この部屋には殆ど入ったことない。
お兄ちゃんと一緒にやっていた時から、千さんの音楽には口を出さないと自分の中での暗黙のルールにしていたから、この部屋に入るのを自分が避けているからだ。

作業部屋の防音になっている重い扉がゆっくり閉まる。
小さめの部屋には、大きいパソコンに複雑な音楽機材が繋がれており、壁にはギターが数本立てかけられていた。


「そこ座って」
『う、うん』

千さんに促されるまま、部屋の奥にある椅子に座る。
千さんは、パソコンの前にあるいつも作業している時に座っているであろう大きい椅子に座り、くるりとこちらを向いた、


『曲をつくってたの?』
「そう」
『新曲なら、私はCDを楽しみに待ってるから!百くんが最初がいいよ』


百くんより先には聞けない。
例え、千さんの頼みでも、百くんに申し訳なさすぎる。
そこの線引きは出来ていて、あくまでRe:valeのファンでいたい。


「いや、この曲は百に聞かせる予定はない」
『え?』
「Re:valeの曲じゃないから。君の前でしか歌わない」
『...』


衝撃的すぎて、言葉が出ない。

Re:valeの曲じゃないとは?


千さんは横にあるギターを手に取り構える。


『ちょっと、よく分からないんだけど...』
「ふふっ、君だけの曲だよ」
『え、、』
「久しぶりに気持ちのままに曲が作れて楽しかったよ」
『弾き語りするの?』
「そうね。最初DTMで作り始めたけど、ギター1本の方が合ってた」


千さんの生のギターをこんなに間近で聴くのは久しぶりだ。

千さんは軽く手に馴染ませるようにギターを弾いてから、改めてこちらを向く。


「聴いて」

私はゆっくり頷いた。

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